刹那その8(13停止目)

幸せを呼ぶ女神

2月13日 午後11時58分
あと2分で2月14日・・・バレンタインである
外にはいつもより活気が満ち溢れ、俺は憂鬱だ
明日は学校休もうかな・・・
そう思ったとき、突然部屋が眩い光に包まれた
そして、光が消えてから目を開けてみると
そこには今までに見た事もないほどの美しい人がいた
時刻を見ると、12時00分
まさかバレンタインの女神様・・・
 「残念ながら違います、私は時の女神と言われる者です」
彼女はどうやら人の心が読めるらしい
彼女の話によると、俺に時間を30秒止める力を使えるようにして
俺に幸せになってもらいたいようだ、俺が不幸そうにしていたから・・・
人を幸せにする事、それが彼女の仕事・・・
力が使えるのは約1年間、その間彼女は俺と一緒に暮らすようだ

彼女は学校にもついて来て一緒に授業を受けたり
俺の飯や弁当も作ってくれたりする
いつも自分でやっているのだが
彼女がどうしてもやりたいからと言ったので、それらはお願いした
彼女は最初黒焦げの飯を作ったり、弁当も黒焦げだったり・・・
彼女に聞くと料理はした事がないそうだ、この仕事も始めてらしい
時間を止める力・・・俺が使ったのは彼女を守る時だけだった
彼女は美人なので結構人の目を引く、当然問題が起こってしまうのだ
他に使う理由がなかった・・・・・俺の幸せは彼女だった
だから・・・俺は怖かった、あの日に近づけば近づくほど・・・・・
しかし、時間は過ぎていく
幸せな時間・・・幸せなほど、早く過ぎていく
そして・・・・・・・
2月13日 午後10時59分
彼女はもう行かないといけない・・・・・次の人を見つけるために
彼女に綺麗な箱を渡された
「少々早いですけど・・・初めて作ってみました、どうぞお食べください」
そう言って彼女は消えてしまった
時刻は11時00分
箱を開けてみるとチョコが入っていた
俺はそれを食べた・・・・・
美味しくて涙が出てきた、涙の理由は違うのはわかっている
彼女がいない寂しさ、彼女がくれた幸せ、彼女が教えてくれた時間の大切さ
全て彼女が来てからだった・・・俺が幸せだと思えたのは・・・・・
これからも彼女は人を幸せにするだろう、俺は最初の人・・・・
生きている限り、彼女との思い出は薄れていくだろう・・・
でも大丈夫、きっと彼女との思い出があれば生きていけるはずだ・・・・・・・・
でも、今だけは悲しみの中に・・・・

11時59分
俺の涙は止まった
目を閉じ、心を落ち着かせる
あと1分で彼女は誰かを幸せにするために現れるだろう
でも、俺ではない・・・
俺は思う、君は今・・・・・どこにいるのだろうか?
 「感傷に浸っている時に申し訳ないのですが・・・」
それは・・・彼女の声だった
目を開けてみると、そこには彼女がいた
時刻は12時00分
何故ここにいるのか聞いてみた
 「あなたは私がいなくなると不幸になってしまうから・・・」
大丈夫だと思っても、本当は泣き叫んでいた
わかっていた、俺には彼女が必要な事が・・・・・
彼女がいてくれる・・・・
それだけで俺は・・・・・幸せだった

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