妄想男その24(42停止目)

過激ボランティア部ロリ先輩
第三話「個性的過ぎる先輩たち」

※第二話は妄想男のHPのログが無いため、本サイトには未収録

 さて、今日の話。
 今私の目の前にいる眼鏡をかけた生徒会長とかが似合いそうで「馬鹿者が!このフ
ラットなラインの素晴らしさがわからんのかね!?」ともえたんの表紙を指しながら
言ってる人が男がロリ先輩です。ロリコンです。
 対して、野球部でもないのにスポーツ刈りで大柄、目が細くて「わからん! 大きい
のはいいことだ!」とエロゲ雑誌を開いておっぱいの大きい二次元女性を指差して熱
弁してるのがデカ先輩です。っていうか学校に堂々とエロゲ雑誌を持ち込まないで下
さい。

 「大きいのはいいことだと? 貴様は小型化されたPCの素晴らしさが分からんのか」
 「黙れロリコンめ。 大体俺達は胸の大きさについて語っているのだ。論理のすり替
えはやめてもらおう」
 「……チッ。ふん! あんなものただの脂肪の塊ではないか」
 「違うな、あれは……愛だ」
 「……愛?」
 「そう、いわば母性の塊……」
 「はっ! 私は女性に母性など求めてはいない! 愛でて撫でて頬ずりしたいのだ!」
 「お前のような奴を特殊嗜好者というんだ! 趣味を押し付けないでもらおうか!」
 「ほぅ、ならばそういう貴様はマザコンかね!?」
 「うるさいロリコン」
 「黙りたまえおっぱい星人。脂肪に溺れて死亡しろ」
 「―――!」
 「〜〜〜!」
 (以下、聞くに堪えない罵詈雑言の雨嵐)

 私は今週のジャンプを読みながら二人の会話を軽く聞き流していました。
 思うのですが、中間を取って普通の大きさのおっぱいじゃだめなんでしょうかね?

 「だめだ」とデカ先輩。
 「萌えん」とロリ先輩。

 まったく、この変態どもは……。

 約30分にわたるおっぱいトークは「人の趣向はそれぞれ」と言う当たり前の結論で
終わったようです。太陽が明るいのと同じくらい当たり前ですね。終戦の握手が交わされ、
つかの間の平和が部室に訪れました。
 「さて、本日の議題に入ろう」とロリ先輩。
 「今日は校内の清掃を行う」とデカ先輩。
 「へぇ、この汚れきっている校内のどこを掃除するんですか?」と聞いてみる。何故か
やたらとにやけているデカ先輩。な、なに……なんだろう? いやな予感が……

 「体育系部室棟」と、遅れて部屋に入ってきたクール先輩が言いました。
 なんだ、意外と普通な解答ですね。

 軽く紹介いたしましょうか。
 あのメガネで真面目そうな人がロリ先輩。
 特殊偏愛嗜好の持ち主で、通り名の示すようにロリコンです。
 あと時間を止める力を持つとかなんとか。

 スポーツ刈りで大柄で目が細いのがデカ先輩。
 おっぱい星人です。オタクです。たまに私でもひくことがあります。

 痩躯、高身長、容姿端麗、常時無表情と4拍子そろった今部室に入ってきた人がクール先輩。
 物凄くかっこいいです。ただ、会話するときは基本的に名詞しか話してくれないため、よく
分からない人です。でもかっこいいんです。着ているのはただの男子制服なのにほかの人のよ
りもピシッとした感じです。妙にセクシーさを感じますね。

 と、読者様に丁寧に解説していると、もうすでに準備が整っているのか部屋を出て行く三人。
 「早苗君、何をしている?」
 「あ、すいません、説明していました。今行きます」

 とりあえずジャンプとか電撃姫とかを片付けて、私は部室を出ました。

 「いいかね、これは生徒会からも勅令を受けた厳正なる任務である」
 「いや、あの……」
 「諸君、不埒な心を捨て去り毅然とした態度でボランティアを励むように」
 「あの……ですから……」
 「ん? どうした早苗君?」

 「どうして女子水泳部の部室なんですか!?」

 「はぁはぁ」
 「ロリ先輩! デカ先輩が興奮して息が荒くなってますって! 危ないですよ!」
 「ふむ……確かに緩んだ顔になっているな……」
 「塩素臭、ナイロンの肌触り、濡れた肢体」
 「な、なんか呪文まで唱えだしましたよ!? この人は戦力外ですって!」
 「しかしな、かなり重労働だからデカは必要なのだ」
 「いや、いいですよ。私だけでやりますから。この人が部の人に見られでもしたら
ボランティア部が廃部になりかねませんから」
 「いや……しかしなぁ……」
 「水着げっとぉぉおおおおお!!!」
 いつの間にか部室の中に入っていたデカ先輩が、紺色のナイロン繊維で構成された
女性専用水中移動特化型スーツを片手に雄たけびを……ってうあああああ!!!

 「いかん、かなり危険な事態が発生した。諸君、ひざまずけ! 命乞いをしろ!
デカからスク水を取りもどせ!」
 「俺のもん! これ俺のもん! 嗅いでいい? これ嗅いでいい?」
 「いかん! 嗅ぐつもりだ!」
 「生死は?」今まで黙っていたクール先輩が颯爽と動き出します。
 「問わんっ!」
 「了解」
 グッと体を沈ませて勢いよく加速したクール先輩は、デカ先輩の腹をめがけて体重を
乗せきったストレートを放ちました。しかし覚醒したデカ先輩は水着をマタドールのよ
うに構えて軽くそのストレートをかわすと、ひじをクール先輩の頭に垂直に「俺の邪魔
を――するなぁぁあぁ!」
 ガツンッ!

 ……あれ? クール先輩が沈黙してしまいましたが……?

 「ク、クール先輩!?」
 「いかん、デカが暴走モードに入っている! 大丈夫かクール!?」
 立ち上がる気配がクール先輩から感じられません。……死んでないですよね、あれ?
頭に直撃してましたけど。

 「ふははははは、着ちゃうぞ着ちゃうぞぉおおお!」
 「く……仕方がない、時間を止めるしか!」
 「ロ、ロリ先輩……!」
 悔しいけど、今は頼りになるのはこの人しかいないようです。
 「いざ、参る!」
 「ナァーイロォーン!」できの悪いロボットが合体でもするかの様にデカ先輩は
水着を「あぼぼぼぼぼぼ!!!」着ようとした瞬間沈黙しました。

 「?」「?」何がなんだか分からず、?マークが私とロリ先輩に浮かびます。
 ドスンと倒れたデカ先輩の後ろには、クール先輩が立っていました。
 「死んだふり」クール先輩はスタンガンらしきものを片手にそうつぶやきました。
「相手を油断させるのは兵法の基本」

 怒涛の展開にどこから突っ込めばいいのか分かりませんが、とりあえずスタンガンは
学校には持ち込み禁止だと思います。

 気絶したデカ先輩は物凄い力で水着を握り締めていました。
 「根性のなせる技だな」
 「冷静に分析してないで、さっさととりますよ」
 しかし、無意識でも放そうとしないのか、無理矢理やったら水着が破れそうです。

 「ふむ、こうなったら一度部室に連行、拘束して起きたところで拷問に掛けて……」
 「何物騒なこと言ってるんですか……」

 と、その時です。
 「でさー、マキったら……」
 「!?」「!!」「……」

 ピンチです、かなりピンチです。水泳部員が帰ってきてしまいました。
 この状況を見られたらどうなるか考えるだけでも恐ろしいです。
 うわ、うわ、どうしましょう。

 「緊急事態だ」ロリ先輩が呟きます。「君たちはどうにかしてくれ」
 次の瞬間、ロリ先輩とデカ先輩の体がこの部屋から消えます。時間を止めて脱出
したようですね。ほっ、問題はこれでなんとか……
 「……」
 「ってクール先輩ーーー!!!」

 水泳部の女子更衣室。微妙に荒らされたロッカーやかばん。そこにいる男子生徒。
 どう見ても圧倒的に不利な状況。
 なのに、この人は
 「安心して」
 「いえいえいえいえいえ!?」
 どうしましょう、私はもう完全にパニックです。

 「く、クール先輩!? こんなところ女子に見られたりしたら今後の学校生活がきっと
暗くなりますよ!? 水着くんとか呼ばれちゃうんですよ!?」
 「大丈夫」
 そういいつつ、制服のボタンを
 「え、……え、ちょ、ちょっとーー!!」
 何を思ったかクール先輩はやおら制服を脱ぎ始め……!!??

 私はそのとき、確かに見ました。見たんです。
 シャツの下にブラをつけているクール先輩を。

 「あ……あぁ……」
 もう目の前が真っ暗です。この人(も)、本物の変態だったんだ……。せっかくかっこいい
顔しているのに……。
 「さすがに男の制服は駄目」そして意味不明なことをいってます。「水着に着替える」
 「あ、あ――」そしてパンツに手をかけて下ろし――「……あれ?」

 一瞬、私はクール先輩が性別のない人間なんじゃないかと思いました。
 いやね、男だと思ってたのについてなかったわけだし。

 プールを借りにきたってことでその場を切り抜け、私たちはボランティア部に戻ります。
 廊下を歩きながら、私はクール先輩に話しかけます。

 「クール先輩はどうして女の子なのに男子の制服を着ているんですか?」
 「私は転校してきた」クール先輩は言う。「でもサイズが無かった。今作ってる」
 「……えーっと……なるほど」
 端折りすぎていて解釈に時間がかかる。

 長身。美形。必要最低限しかしゃべらない、なぜか男子制服を着ている“女の子”の先輩。
 それがクール先輩。
 この部はほんっとに、個性的な人が多いです。頭痛がするくらいに。

 がらりとボランティア部のドアを開ける。
 「ただいま戻りました」
 とりあえず、ひと段落。休も――

 「……ミズギ」
 「……スクミズ」

 スクール水着を前に正座しているロリ・デカ先輩に全力のチョップをくれてやってから椅子に座りました。
 「時間をとめてでも返すんです、絶対、必ず、こっそりと」

 「……水着とは、魔力の塊だ」
 ロリ先輩は意味のわからないことをつぶやいたのでした。
 「あぁ……この艶は男を惑わす」
 と、デカ先輩も……あー、もういいや、コメントする気力も残ってないです。
 疲れたんで少し休ませてください。
 ――はぁ。

 /終

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