喪吉その1(3~7停止目)

「止まれ!」
砂時計が回転し、砂が静かに落ち始める・・・。

俺は喪雄。IT系企業に勤める28歳。
根っからの喪男である俺は当然彼女居ない暦=年齢。
俺がこの不思議な能力を身に付けたのは先週の日曜日。
この日から俺の人生が大きく変わり始めた。

その日は近所の公園でフリーマッケットが行われていた。
このフリーマーケットは割と有名らしく、参加者も多い。
客足もかなりの数である。
別段フリーマーケットが好きと言う訳でもないが、休日だと言うのにやることもない
俺は、宛ても無くフリーマーケットをぶらついていた。

突然現れた奇妙な光景に、俺はふと足を止める。
普通フリーマーケットの商品は色々な物が所狭しと並べられているが、
そこには風呂敷の上に砂時計が一つだけしか置かれていないのだ。
店番の人も居ない。
別に砂時計が好きな訳ではないのだが何かが気になり、砂時計を手に取る。
その瞬間、急に視界が真っ白になる。
真っ白な視界に何かが浮かび上がってくる。
「砂時計?」
風呂敷の上に置かれていた砂時計だった。
何者かが俺の意識に囁きかけてくる。

「砂時計の落ちる時間は30秒。その間だけ時を止める事ができる」
男の声。
「使い方は『止まれ』と念じればいい」
女の声。
「一日に何度使ってもいいけど、それなりの代償は貰うよ」
子供の声。
「代償とはお前さんの一日分の寿命」
老人の声。

・・・・・・

「ちょっと、あなた、大丈夫? 顔色が真っ青よ」
中年の女性が心配そうに俺に声を掛けている。
どうやら白昼夢でも観たらしい。

「だ、大丈夫です。ちょっと立ちくらみがしただけですので・・・」
俺はふらつきながらその場を後にした。

六畳一間の自宅アパートに帰った俺は体に起こった異変に気付く。
「あざ?」
右手の甲に今まで無かった痣があった。
心なしか痣の形が砂時計の形に見える。

「まさかな。関係ないか」
独り言を言いながら手に出来た痣を見つめる。

ピンポーン。
ドアの呼び鈴が鳴った。

カチャ。
ドアを開けると、そこには見知らぬ親子が立っていた。
母親らしき女性は20代後半、ストレートヘアーのスリムというか、げっそりした感じの女性。
化粧っ気がないからか、やつれて見えるが、顔の作りは悪くはない。
子供の方は小学生低学年位か。ツインテールに上がり目のせいか、小生意気な感じがする。
見覚えの無い親子連れの登場で困惑している俺に、母親らしき女性が話し掛けてくる。

「あなたのために祈らせて下さい」
何だ、宗教かよ。まぁ、喪男の俺んとこに来る女なんて、宗教関係か、マルチの勧誘位だが。
「立ち話も何なので、上がらせてもらって・・・」
勝手に上がりこんでくる親子。
「ちょ、ちょっと、何勝手に上がりこんでるんだよ!」

俺の言うことなど意に介さず、奥に進んで行く母親。
「一人暮らしですか? やっぱり男性の一人暮らしは散らかってますねぇ〜」
放っておけよ! って、何かってに座り込んでるんだよ!
この女勝手にコタツの上のものをベッドに移動しやがった。
うわ、エロ本摘み上げるんじゃねぇよ!

「ちょっと、勝手に人のものを触らないでくれませんか?って、そうじゃなくて、
何上がりこんでるんですか!」
慌ててコタツの前に行き、お気に入りのエロ本を母親の手から奪う。

「そんな所に立ってないで、遠慮なさらずに座ったらいかがですか?」
まるで自分の部屋のように振舞う母親。
「遠慮して立ってる訳じゃないし!」
「ママー、ジュース飲んでいい?」
いつの間にか冷蔵庫から買い置きのペプシを持ってくる娘。

「あら、まぁ、すいません。お兄さんにちゃんとお礼を言うのよ」
俺はあげてねぇよ! 何勝手に冷蔵庫開けてペプシ持ってきてんだよ!
「お兄ちゃん、コップ持ってきて〜」
勝手に冷蔵庫から持ってきた挙句に、コップまでねだるか、このガキは!

脱力した俺はキッチンまでコップを取りに行く。
コタツの上には母親が所狭しと広げた怪しげなパンフレット。
「はい、コップ」
奥歯をかみ締め、憎々しげに子供の前にコップを置く。

俺は親子の対面どかっと座った。
「で、何なんですか? あなたたちは」
母親はカタログを広げ終わったらしく、こちらを向く。
その横で娘がコップにペプシを注いでいる。
シュワシュワシュワ。
コップに注がれて行くペプシ。

「ところで、喪雄さん。あなた最近良くない事が多くないですか?」
俺の質問をまったく無視し、母親が話し始めた。
「何で、俺の名前を?」
見ず知らずの女性に俺の名前を呼ばれ、不思議そうな顔で問いただす。

「表に書いてあった」
玄関の方を指差した娘が言った。
シュワシュワシュワ。更に注がれるペプシ。
あぁ、そうか、表札掛けてあるしなって、おい、溢れる、溢れる!
そう思った瞬間、コップからペプシが溢れた。
「あらあら、大変」
そう言いながら母親はこぼれたペプシをコタツ布団で拭き始める。

「うわ、ちょっと、今雑巾持ってきますから!」
慌てて雑巾を取りに行く俺。
「大丈夫ですよ。大した事ありませんから」
そう言いながらパンフレットまでコタツ布団で拭き始める母親。

いや、お前が大したことなくても、俺に取っては大したことあるから!
ってか、それ、俺のコタツ布団だから!
急いで雑巾を持って行くが、時既に遅し。溢れ出したペプシはことごとく
コタツ布団が吸い取っていた。
コタツ布団に黒い大きなしみ。
俺は脱力して座り込んだ。

「喪雄さん。あなた最近良くない事が多くないですか?」
何事も無かったかのように話を始める母親。

在ったよ。たった今起こったよ。ってか、起こってるよ。
お前らだよ! お前ら親子が来た事が良くない事だよ!

「在りますよ!」
力いっぱい相槌を打つ。
「そこで、我が幸福の連絡会では喪雄さんを幸福にするために〜(略)」
うわ、説明始めたよ、この女。
つーか、帰ってくれよ・・・。今の俺にはそれが一番の幸福だよ・・・。

母親が鞄から何か取り出す。
うわ、壷かよ。宗教と壷のダブルパンチかよ!
「この壷に毎日お祈りすれば〜(略)」

「そういうのはいりませんから」
俺は話を拒絶する意味で、手を前に出す。
それと同時に(偶然か?)母親が壷を俺の前に出した。
俺の手が壷に当たり、壷が母親の手からこぼれ落ちる。

やばい! この女のことだから、割れたりしたら弁償させられる!
うわ、と、止まれ! 俺は慌てて壷を掴もうと手を伸ばす。

何とか壷をキャッチ!
やれやれ、一安心。壷をコタツの上に置く。
その時、俺は右手の異変に気付いた。
右手の甲に砂時計が乗っているのである。

サラサラ・・・。
砂時計の砂は少しずつ落ちて行く。

「な、なんだ? 何で俺の右手に砂時計?」
俺は視線を砂時計から母親の方に移した。
ん? 何か変だ。視線の先には壷を落とした時のポーズで固まっている母親。
その横でペプシを飲み続ける娘。

「どうしました?」
母親の顔の前で手をヒラヒラさせてみる。
無反応な母親。
母親の頬をツネってみる。
やはり無反応。
娘からコップを取り上げ、逆さにしてみるがペプシはこぼれない。
ちなみに、コップを逆さにしたのは娘の頭の上だ。

俺はさっき観た白昼夢を思い出した。
時が止まったのか・・・?

そして時が動き出した。
「あ、壷が! あい痛たたたたたっ」
頬を抑え、痛がりながら慌てる母親。
バシャ。ゴツン。
頭からコップが直撃し、娘がペプシまみれになる。

「壷が割れ・・て・・・無い?」
頬を抑えながら、コタツの上に置かれた壷を見付け、あっけに取られる母親。
頭にコップがぶつかった痛さからか、娘が泣き始めた。

俺は我に返り、右手を見る。
右手に乗っていた砂時計は、今はもう無い。

「あの、今壷が落ちて、あれ? 壷が壷で・・・」
何が起こったか判らずにうろたえる母親。

そんな親子をよそに、俺は考え事を始める。
割れずにコタツの上に置かれている壷。
飲んでいたはずのコップが、頭上から落下して泣き始めた娘。

時間が止まるのは本当のことだったのか。
あれは白昼夢なんかじゃ無かったのか。
俺はあの時観た白昼夢の内容を必死に思い出す。

確か、止まれと念じれば30秒間時間が止まるんだよな。
1回に尽き寿命がうんぬん言ってたけど、なんだっけ? まぁ、いいか。
母親が頬を痛がってるってことは、時間が止まってる間に行ったことでも、
時間が動き出すと影響があるが、何が起こっているかは判らないってことか・・・。
などと冷静に分析しつつ、考え事を続ける。

「コップが頭で、ペプシに〜」
未だに状況が飲み込めずに泣きじゃくる娘。
「静かにしなさい! 喪雄さん、聞いていますか?」
いつの間にか母親は冷静さを取り戻し、説明を再開していたらしい。

「あ、え?」

「あなたの幸運に関わる大切なことですよ? ちゃんと聞いて下さい。
兎に角ですね、毎日この壷に祈っていれば・・・」
話を元に戻そうとする母親。めげないと言うか、なんというか・・・。

「コップが頭で、ペプシに〜」
未だに状況が飲み込めずに泣きじゃくる娘。
「静かにしなさい! 喪雄さん、聞いていますか?」
いつの間にか母親は冷静さを取り戻し、説明を再開していたらしい。

「あ、え?」

「あなたの幸運に関わる大切なことですよ? ちゃんと聞いて下さい。
兎に角ですね、毎日この壷に祈っていれば・・・」
話を元に戻そうとする母親。めげないと言うか、なんというか・・・。

そういえば、この能力は何度でも使えるって言ってたよな。
もう一度使ってみるか。
止まれ! 俺は心の中で念じる。
口を開いたままで固まる母親。辺りに静寂が訪れる。
時間は止まったようだ。
俺は右手を見る。右手の上には砂時計が乗っていた。
どうやら砂時計は、時間が止まっている時に現れるものらしい。
俺は立ち上がり、壷をゴミ箱に捨ててくる。

砂時計を見ると半分以上残っている。
まだ止まってる時間は残ってるみたいだな。

俺の中のちょっぴりの欲望とイタズラ心が湧き上がる。
ワシッ
母親の胸を鷲掴みする。
モミモミモミ。
痩せている割にはこの女、結構胸があるななどと考えつつ、横に座っている娘に目を向ける。
目に涙を溜めた状態で下を向いている。
どうやら母親に叱られて泣くのを我慢している状態で止まったようだ。

「このガキ、よくも好き勝手やりやがって」
この娘の暴虐武人ぶりを思い出し、一発小突いてやろうと考えるが、思いとどまる。
「幼児虐待は良くないよな・・・」
しかし、腹の虫は収まらない。
「ま、まぁ、俺が直接やらないならいいか・・・」
などと、勝手な解釈の元、娘の頭上に再びコップをセットし、元の位置に戻る。

そして、時が動き出す。

「壷からエネルギーが、きゃっ」
ゴチ。
胸を両手で抑えながら、母親は体を仰け反らせた。
「うわぁぁん」
再び頭にコップが落ち、その衝撃で泣き始める娘。

「どの壷ですか?」
俺はとぼけて母親に聞き返す。
「この胸・・・じゃなく、この壷・・・壷、壷? あれ? 壷はどこ?」
突然消えた壷を探し始める母親。

「この壷がですね。え〜と壷が・・・」などと言いながらコタツの布団を捲り上げたりしている。
「うぇぇん。コップが、コップがぁ」娘は相変わらず泣いている。

「そう、このテーブルの上にコップが・・・」
「コップ?」さりげなく突っ込みを入れる。

「そう、コップじゃなく・・・ちょっとうるさい!」
ベチン。
母親が泣きじゃくる娘の頭を叩く。

あ、幼児虐待だ。い〜けないんだ、いけないんだ〜などと心の中で歌いつつ、親子を観察する。

壷を諦めたのか、母親は探すのを止め、再び鞄の中から何かを取り出した。
「えーと、壷ではなく、この数珠を身につけて毎日お祈りをすれば・・・」
どうやら壷を諦め、数珠を売るつもりらしい。
娘の方は頭上を警戒して天井の方を見つめている。

俺は再び時を止める。
とりあえず、娘の頭上にコップを配置。
母親の手から数珠を取り上げ、ゴミ箱にポイッ。
変わりに雑巾を握らせる。
残り時間はまだある。
再度母親の胸を揉み始める。
モミモミモミ。
「ただ、揉んでるだけじゃつまらないな」
そう考えた俺は、服の中に手を入れ、直接触ってみる。
「うわ、柔らけえ。このポッチリは・・・」
砂時計の砂が残り少なくなる。
名残惜しかったが、服から手を抜き、元の位置に座った。

時が動き出す。

何か違和感を感じたのか、母親の体がビクっと震え、雑巾を握り締めた。
娘の方は、頭上に現れたコップに気付き、受け止めようとするが、人間、そんな一瞬で行動できる
ものではない。
娘のおでこにコップが直撃する。
ちなみに、このコップ、強化プラスティック製品なので割れる事は無い。
点灯防止用の錘が底に仕込まれているタイプなのでそこそこ重かったりもする。
「うぇぇん」

「雑巾は身に付けるものじゃないし、第一、それうちの雑巾ですよ?」
俺は雑巾を指差し、母親に話し掛ける。

「え? 雑巾?」
母親は、俺の言葉に我を取り戻し、しっかりと握っている雑巾に目をやった。
「あれ? 数珠が雑巾で、雑巾が数珠で・・・」
訳の判らないことをしゃべりながら、母親は雑巾を放り投げ、数珠を探し始めた。
娘の方に目をやると、どうやらコップに気付いてからでは受け取れないこと学習したらしく、
ベッドに放り投げられた週刊誌で、頭をガードしてい。なかなかやるな! 小学生!

ついに数珠を諦めた母親が、違う話を切り出してくる。
「最近、この辺りも物騒になってきてますよね? 火事も多いですし。
私たち幸福の科学会では、火事に備えて携帯用消火器を・・・」
今度は消火器の販売に切り替えるらしい。母親はそう言いながら鞄から消火器を取り出そうとする。
ちなみに、鞄は母親の後ろに置いてある。物を取り出すときはこちらにお尻を向ける形で取り出すのである。

母親が消火器を取り出そうとした瞬間に時を止める。
ちょっと鞄の中を覗く。

携帯用消火器、ハンカチ、ラベルを貼り替えた怪しげな水、その他etc・・・。
某アニメの四次元ポケット並に、色々入れられている。
さすがにこれを全部出されたら、厄介だ。俺は鞄の中身を全部ゴミ箱の中に捨ててくる。
とりあえず、娘が頭をガードしている週刊誌を除けて、コップを頭上にセット。
時間は後15秒位残っている。
お尻を向けて四つんばいになっている女性が目の前に居たら、当然触ってみたくなるのが
男と言うものである。
母親のスカートを捲り上げる。以外にも猫さんプリントのパンツが目の前に現れる。
俺は母親のお尻を撫でまわし始めた。

「暖かい・・・」手がちょうど股の部分に触れた時、俺はそう呟きながら手を止めた。
「ちょっと、中を見てみようかな」俺の心臓はすでに早鐘のごとく、バクバク脈打っている。
母親のパンツを膝まで下ろす。目の前のお尻から、女性器があらわになる。
触ろうと手を伸ばした時に、砂時計の砂が残り少ない事に気付いき、慌ててスカートを戻し、
元の場所に座り直した。

そして時が動き出す。

ゴッ
頭を週刊誌でガードしていた安心感からか、ものの見事にコップは娘の頭に直撃。
ガードしていた週刊誌が無くなっていることに気付き、口を尖らせ半泣き状態になる娘。
「あれ? 変ね。中身が無いわ。他の鞄と間違えたのかしら?」

中身が入っていない事に気付いた母親がこちらに向き直る。
「すみません、ちょっと鞄間違えたみたいで・・・。すぐに持ってきますね」
言うや否や、母親は立ち上がろうとした。

「あ、パンツ戻し忘れた」俺がそう考えた瞬間。
ズルッ。ブチッ。ズサー。
頭からものの見事にスライディングをする母親。
スカートが捲れ上がり、お尻丸出し状態である。

痛さからか、恥ずかしさからか、立ち上がれずにピクピクしている母親。
「お母さん、お尻丸出し〜」

「いやぁん」
娘の言葉に、自分がどういう状態か把握出来たようだ。
慌てて立ち上がろうとするが、ゴムの切れたパンツに再び足を取られ、またまた勢い良く
スライディングをする母親。
ズルッ。ブチッ。ズサー。ごちーん・・・。
どうやら冷蔵庫に頭をぶつけたらしい。

「もう、いやぁぁぁぁぁ」半泣き状態でドアから出て行く母親。
娘も、慌ててそれに付いて走って行く。
嵐のような宗教親子が出て行った後には、床に転がった猫さんプリントのパンツ。

「宗教グッズどしよう・・・。次の燃えないゴミは何曜日だったっけかなぁ」
などと考えつつ、俺はドアに鍵を掛けた。

宗教親子を追い返した俺は、今日起こった出来事を、思い返してみる。

どうやら、フリーマーケットで起こった出来事は、白昼夢では無かったようだ。
その証拠に、ゴミ箱には怪しげな宗教グッズが捨てられている。

「俺は、マジに時間を止める力を身につけたのか! すげー、俺、SUGEEEE!!!」
「30秒か。ちょっと短いけど、工夫次第では色々できるよな!?
うわぁ、ちょっと、マジ、すげー。何やろうかな?」
時間を止められる、という能力に有頂天になった俺は、猫さんプリントのパンツを握り締め、
ベッドに腰掛けて色々思案を始める。

「銀行でも襲って金奪うか? いや、30秒じゃ無理だよな。
輸送中に襲う? 上手くやれば可能だろうけど、ちょっと計画が面倒だよなぁ」
「まぁ、今はそれほど金に困ってる訳じゃないし、やっぱり、エッチな事に使いたいよな!」
「30秒じゃ、本番は無理だし、うーん・・・。考えてみると結構難しいな・・・」
ベッドの上で、もんどりうって考えているうちに、夜は深けて行く。

ピピッ ピピピピッ
翌朝、目覚し時計の電子音が鳴り、俺は目を覚ました。
枕元に転がる猫さんプリントのパンツが、昨日の出来事が夢ではない事を、物語っている。
何を隠そう、昨夜はこのパンツで2回ほど抜いた。

「夢じゃなかったんだ!」
俺は枕元からパンツを拾い上げる。
ニチャ。
「!?」
どうやら、昨夜の俺汁が、パンツにこびり付いていたようだ。
俺は、慌ててパンツをゴミ箱に放り込み、手を洗いに行く。

昨夜の考えで、30秒は短いが、痴漢位なら可能、と言う結論が出ている。
朝の通勤電車で試してみることにした俺は、はやる気持ちを抑え、身支度もそこそこに出勤した。

ガタン ガタン。
ぎゅ、ぎゅー・・・。
言い忘れていたが、俺の乗る通勤電車は、都内随一の乗車率を誇り、ラッシュも半端じゃない。
痴漢どころか、腕一本、まともに動かすことができない状態である。
「こ、これじゃ、時間を止めても意味が・・・」
俺は、朝のラッシュを諦め、帰りのラッシュに、期待することにした。

俺の勤務する会社は、社員50人ほどの中小企業。
IT系のSEと言えば、聞こえはいいが、実際にやっていることと言えば、社長専属のパソコン指導員
みたいなことである。

朝のチャイムと同時に会社に滑り込む。
ギリギリセーフ。
自分の席に座った俺は、机に置かれたメモを発見する。
庶務担当の佐藤亜紀が、書いたメモである。
亜紀は、うちの課唯一の女性社員で、電話番や交通費の清算など、庶務一般を担当している。
年齢は、今年短大を卒業したばかりの21歳。
ぱっと見、菅野美穂に似ており、天然入っているが、まぁまぁ、可愛いほうである。

内容を確認してみると、丸っこい文字で、こう書かれていた。
「10時に社長室へ行って下さい」

またヅラ社長のお呼び出しである。
本当にヅラなのかは、誰も確認した訳ではないが、毎日変わらぬ髪型、生命感の無い髪質、
やたら頭部を気にするところをみると、本当のことなのであろう。
いつもの呼び出しならば、時間指定などすることはなく、すぐ来いの一言なのだが、
今回の呼び出しには、時間指定がしてある。
いつもの呼び出しとは違うのだろうか? 多少気にはなったものの、帰りの電車のことで頭が一杯の俺は、
大して気にせずに妄想の世界に入り込んだ。

「喪雄さん、10時になりますよ〜」
うちの課には、俺と同じ苗字がもう一人居るので、それぞれ下の名前で呼ばれる。
亜紀の間延びした声により、妄想世界から現実世界に引き戻される。
いつの間にかに、10時になっていたようだ。
俺は社長室に向かう。

社長室の中は、それほど広くは無いものの、高そうな応接セットが置いてある。
奥の社長机には、誰も座っておらず、一人掛けのソファに社長、その向かい側の3人掛けソファには、
女性が座っていた。

「社長、お呼びでしょうか?」
俺は、社長には目もくれず、3人掛けソファに座る女性を見る。
年齢は30歳前後。髪はアップにしているが、下ろせばロングだろう。
PTAのオバサンのような眼鏡を掛けているため、顔の印象はキツメだが、美人である。
チャコールグレーのパンツスーツを着ており、白いブラウスの胸元から覗く胸が、
彼女が巨乳だと言うことを物語っている。

名刺交換を済ませ、俺は、社長の横のソファに腰を掛ける。
名刺から、彼女の名前は荻原久美子と言うことが判る。
某外資系IT企業のマネージャー職のようだ。
外資系とは言え、30歳未満でマネージャー職である。かなり優秀な人材なのであろう。
そんな優秀な人材が、俺みたいな社壊人やってるようなやつに、用があるとは思えないのだが・・・。

話の概要はこうである。
今後うちの社は、今度荻原久美子の勤務する会社と業務提携を結ぶ。
そこで、うちの社から久美子の会社へ出向する人材として、取り立てて仕事もない俺に、
白羽の矢が刺さった、と言う訳である。
今のポジションが気に入っている俺に取っては、迷惑な話だ。

出向した後に行う業務や、出向する時期、その他詳細についての話になる。
俺に拒否権は無いようだ。
コンコン。ドアをノックする音が聞こえる。

亜紀がトレイにコーヒーを乗せて入ってくる。
何を隠そう、亜紀は天然入ってるだけではなく、俗に言うドジっ娘でもある。
給湯室の湯沸し器を壊したり、コピー機を壊したり、何も無い平地で普通に
コケたりするのである。

ズルッ
そんな亜紀を目線で追っていると案の定、何も無い所でコケた。
しかも、コーヒーの乗ったトレイを持ったままである!

「止まれ!」
俺は時を止めた。空中で止まるコーヒーの載ったトレイ。
ウルトラマンが空を飛ぶようなポーズで、静止する亜紀。

「やれやれ。やっぱり、やったか」
俺は立ち上がり、空中で止まったコーヒーカップを、テーブルの上に移動する。
砂時計の砂は十分に残っている。

「とりあえず、これはコーヒーをこぼさずに済んだ、お礼だ」
俺は、亜紀の胸を揉む。揉みごたえが無い。やはり、貧乳だった。
亜紀の胸を揉みながら、俺はふと、社長の頭を見る。
「これは、確認するしか無いでしょう!」

日頃からの欲望が、この時、一気に爆発した。
俺は社長の頭部に手を置き、髪の毛を触ってみる。
何か硬い金属のような感触が、手に伝わる。
少し力を込めて金属部分を押してみる
パチン、と何かが外れる音がした。
どうやら、金属のピンで留めるタイプのカツラのようだ。
俺はカツラを持ち上げ、社長の頭部を観察する。
頭頂部が見事なまでに禿げ上がっている。河童禿げのような状態である。
「うお、ザビエル!」俺は、思わずそんな事を口走る。

ちなみに、この社長は、今年45歳、独身。
砂時計を見ると残り僅か。
俺は急いでカツラを元の位置に戻そうとするが、何せ、一度も身に付けたことも、
触ったこともない代物である。
そう簡単に装着などできる訳はない。
焦る俺を余所に、砂時計の砂は、どんどん減って行く。
間に合わない! そう悟った俺は、亜紀の手からトレイを取り上げ、社長の頭上にセットする。
そう、トレイがぶつかって、カツラが外れた事にするのだ!
「亜紀、スマン。これでコーヒーの件は無かった事にするから!」
先ほど亜紀の胸を揉んだことなど、すっかり無かった事にして、素早く元のソファに座る。

そして、時が動き出す。

くわぁぁぁん・・・。
「ぐが!」
ズサササー。

亜紀は、見事なスライディングで滑り込んだ。
捲れあがったスカートの中から、熊さんプリントのパンツが丸見え状態で、亜紀がぴくぴくしている。
俺は社長に目線を移す。
トレイの衝撃からか、社長の焦点は定まっていない。
再び視線を動かし、久美子の方を見る。
半分口が開いた状態で、久美子は固まっていた。

「な、何だ?」
今ひとつ状況が理解できていない社長の一言により、一同は我を取り戻した。

「す、すみませんでした!」
亜紀は慌てて立ち上がり、こちらを向いて謝る。お辞儀の途中で動きが止まる。
社長の言葉に、我を取り戻した久美子が、社長の方を向き、視線が頭部で止まる。

「いたたた・・・」
ようやく、トレイがぶつかった痛みを感じたのか、社長の手が頭を抑える。
社長の手が止まる。
しばし、気不味い沈黙。

宙を泳ぐ、社長の視線。
どうやら、カツラを探しているようだ。
社長の視線が久美子を見たところ止まった。
一同が、社長の視線の先を確認する。
偶然にもカツラは、トレイのぶつかった衝撃で、久美子の胸元に飛んでいたのである。
慌てて、久美子の胸元にあるカツラを掴む社長。

むぎゅ。
慌てすぎていたためか、はたまた故意なのか。
カツラと一緒に、久美子の胸まで掴んでしまったらしい。

「きゃぁぁぁぁぁ」
バチーン
バタン
タッタッタタタタタ・・・
久美子が走り去って行く。

突然の出来事に、硬直している、俺と亜紀。
社長の手は、カツラを握り締めたまま、止まっている。

「社長、セクハラです・・・」亜紀がぼそっと呟く。
「わざとじゃないんだ・・・わざとじゃないんだ・・・」カツラを握り締めたまま、社長が呟く。
「事故・・・と、言うことにしておきましょう・・・」それだけ答える俺。

「頼む・・・」
肩を落とし、顔に赤い手形をつけた社長を尻目に、俺と亜紀は社長室を後にする。
この業務提携の話は無かったことになる、かも知れない・・・。

今、俺と亜紀は、社長の奢りで、イタリアンレストランのランチコース料理を食べている。
社長の奢りと言っても、この場に社長が居る訳ではなく、社長から、口封じ?のために頂いた
お金で食事をしているのである。

あの後、冷静さを取り戻した久美子が、荷物を取りに戻ってきた。
社長と、なぜか俺まで土下座させられ、二人で謝ることで、何とか事態は収拾した。
この事は、貸しと言う形になってしまったが。
今後、この事で、俺がどんなとばっちりに合うことやら・・・。

「社長、やっぱり、カツラでしたね〜!」
幸せそうに、パスタを頬張りながら亜紀が話始めた。

「お前さんは、この奢りのランチの意味が判ってるのか?」
「誰も聞いてませんよ〜。多分」ちゅるると音をさせ、パスタをすすりながら、亜紀が話し続ける。
「それに、公然の秘密ってやつじゃないですか〜。今更、みんなにバラしたからって、
誰も驚きませんよ〜」

「お前、もしかしてカツラのことを、みんなにメールで送るつもりじゃないだろうな?」
俺の問いかけに、フォークを持つ亜紀の手が止まる。

「え? い、いやだなぁ、そ、そんなことシマセンよ〜。あはは〜」
亜紀の態度から、明らかに送ろうとしていたことが判る。

「お前なぁ、いくら公然の秘密だからって、人には知られたくないことだってあるだろ・・・。
お前だって、熊さんパンツのこと、とか言われたくないだろ?」

「違います! ぽーさんパンツです!」
亜紀の口から勢い良くパスタが飛び出し、俺の顔に付着する。
ぽーさんとは、ネズッキーアイランドのマスコットキャラで、モチーフが熊のアニメのことである。

「似たようなもんだろ・・・」俺は、顔に付着したパスタを取りながら言う。

「まったく違います! ぽーさんはですね!」
この後、亜紀のぽーさん談義が30分ほど続き、デーザートを食べ終わる頃に、ようやく開放された。

社長も、午前中のことを気にしてか、午後は呼び出しもなく、俺は定時に帰宅することが出来た。
夕方の通勤ラッシュは、午前中ほどではないにしろ、そこそこの混雑具合である。
俺は午後いっぱい、練りに練った作戦を実行すべく、ターゲットの選定を行う。
扉が開き、チャコールグレーのパンツスーツを着たグラマーな女性が乗車してくる。
「今日のターゲットはあの女性に決定!」
俺は心の中で呟きつつ、パンツスーツの女性へと向かう。
混雑により、なかなか身動きが取れなかったが、何とか彼女の斜め後ろに張り付くことに成功。

パンツスーツの女性を少し観察してみる。
髪は黒のロング。俺の位置からは顔は見えないが、眼鏡を掛けているようだ。
新聞を読んでおり(しかも英字新聞)、どこかで嗅いだことがあるような、香水の匂いが微かに漂う。
パンツスーツのヒップラインのお尻から、ボリュームはあるものの、形が良いのが判る。
なかなか色っぽいお尻である。
そんな俺の気配を感じてか、彼女が振り返る。
しばし、見詰め合う俺と彼女。

「お、荻原さん・・・。こ、これから帰宅ですか?」
「あなたは・・・。いいえ、一度帰社しようと思いまして・・・」
そう、彼女は午前中出会った荻原久美子であった。
久美子の勤務する会社と、うちの会社は同じ沿線にある。
とは言え、ラッシュ時間帯に同じ車両に乗り合わせるとは、偶然を通り越し、
運命の出会いと言えるだろう。多分。

「これからご帰宅ですか?」
「はい、今日は珍しく定時に開放されたもので」
悪戯を見破られた子供のように、どぎまぎしながら、当り障りの無い会話を続ける、俺。

キキー
電車の急制動の音が響き渡る。
後ろを向いてる久美子の体制が崩れ、俺の方へ倒れ掛かる。

ぐりっ!
「ふぎゃっ!」俺は久美子のヒールに、足を踏まれ、奇声をあげながら、うずくまった。
久美子は、俺の足を踏んだ事に気付いたのか、慌てて足を戻すが、その反動でバランスを崩し、俺の方に
倒れ込んだ。

むぎゅ〜。
うずくまった俺の顔に、圧力が圧し掛かる。どうやら、うずくまった俺の顔目掛けて、久美子の形の良いお尻が、
乗りかかってきたようだ。
顔面騎乗のような体制の俺と久美子。

「す、すみません」
久美子が慌てて、立ち上がろうとするが、再びバランスを崩し、俺の腹部に久美子が倒れ込んだ。

「ふげへ!」再び奇声を上げる俺。
この時、すでに周りの目は、俺らに釘付けである。

「すみません、すみません」
明らかに動揺している久美子。再び立ち上がろうとするが、またしても、バランス崩す。

「止まれ!」
周りの喧騒が消え、久美子が空中で静止する。
さすがに、何度も圧し掛かられては、堪らない。
久美子を回避しようと、俺は時間を止め、立ち上がろうとした。

ズキッ
久美子に踏まれたつま先に、激痛が走り、俺はバランスを崩し、倒れ込みそうになる。
慌てて、目の前のイケメンのベルトを捕まえ、体制を整えた。

目の前には、宙に浮いた状態で止まっている久美子。ヒールの踵が転がっている。
どうやら、俺の足を踏んだ拍子に、踵が取れてしまい、バランスが取れなかったようだ。

「痛ぅ〜、まったく、何度も倒れ込みやがって。 この尻が!!」
俺は八つ当たりに、久美子のお尻を思いっきり叩く。

ぽよん。
何とも心地よい弾力が、俺の手に伝わる。

ぽよん、ぽよん。
あまりの感触の良さに、俺は、何度も久美子のお尻を叩いたり、撫でたりし始める。
さわさわさわさわ。もみもみもみ。
調子に乗り、胸まで揉む。

お尻の触り心地も良いが、巨乳の胸の揉み応えも、堪らなく良い。
俺は、久美子のシャツ胸元から、そっと手を入れ、胸を直接触り始める。
手が小さな突起物に触れる。久美子は巨乳の割には、乳首は小さい方らしい。
指先で転がしていると、乳首が段々と硬くなってくるのが判る。
どうやら、時間が止まっている間でも、体の反応はあるらしい。
俺は、我を忘れ、乳首を転がし続け、気付くと、砂時計の砂がほとんど無くなっていた。
慌てて胸から手を抜いた瞬間に時が動き出す。

どんっ。
後ろから胸を揉んでいたため、久美子が俺に抱きかかえれるように倒れ込んでくる。

「すみません、何度も・・・。すぐに立ち上がりますので」
「あ、ちょっと、待って」俺は久美子が立ち上がろうとするのを制止した。

周りも、ようやく事態を把握したのか、一人の男性が声を掛けてくる。
先ほど、俺がベルトを掴んだイケメンである。
なるほど、イケメンは行動までイケメンなのである。俺が、このような状況に出くわしたら、恐らく、
影で笑ってるだけで、手など貸しはしないだろう。

「大丈夫ですか?」
俺と久美子は同時にイケメンの方に振り向き、イケメンが手を出してきた。

ズルッ
イケメンが手を出したと同時に、イケメンのズボンとパンツが膝までずり落ちる。

「き、きゃぁぁぁぁぁ!」久美子が俺の方を向き、抱きついてくる。
久美子のむにっとした巨乳の感触が堪らない。

久美子の悲鳴にきょとんとしているイケメン君。
周りの視線が、久美子からイケメン君の下半身に移る。
イケメン君も視線の先を追い、自分の下半身に目を移す。

「うわわわ、いや、これは違うんです! ご、誤解です!」などとシドロモドロに言い訳をしながら、
久美子の方へ近づいてくる。

「いやぁぁぁぁぁ」近づいてくるイケメンを見て、更に力いっぱい、久美子が俺に抱きついてくる。
「おま、ちょ、ちょっと、近づくな!」ようやく我に返った俺が、久美子を庇うような体制を取る。

「痴漢か?」
「こいつ、チンコ出してるぞ!」
「変態だ!」
「駅員に突き出してやる!」
哀れ、フルチン状態のイケメン君は、他の乗客に取り押さえられ、扉の方へ連行される。

ようやく落ち着きを取り戻した久美子に、ヒールの踵が取れていることを伝える。
何とか立ち上がることは出来たが、このままでは、歩行は困難であろう。
俺は、次の駅で下車し、俺がサンダルか何かを買ってくることを提案した。

電車を下りる時に、俺が久美子を背負うことに遠慮したのか、久美子が断ってくるが、
現状どうしようもないと納得し、提案を受け入れた。

俺は次の駅で久美子を背負い、下車する。
背中に伝わる、胸の感触が何とも心地良い。
名残惜しかったが、俺は、久美子をベンチに座らせる。

フルチンイケメン君が、駅員に連れられ、久美子に事情を説明。
何とか、事故という事で許してもらい、フルチン事件は一件落着したかに見えたが、
イケメン君がお辞儀をした瞬間に、再びズボンがずり落ち、再び久美子の悲鳴が、
駅に木霊する。
結局イケメン君は駅員室に連れさられることになったようだ。

事故の原因が俺とは言え、久美子も良く事故に遭う人である。
この先、久美子は何度事故に遭うことになるのだろうか?

俺は、サンダルを買いに駅ビルへ向かった・・・。

俺は、先ほどの提案通りにサンダルを購入し、久美子の元へ戻る。
購入したサンダルは、ヒールの踵が折れたことと、久美子の服装を
教え、店員が選んだものなので、趣味は悪くないはずだ。

俺がホームに戻ると、久美子はベンチに座り電話をしていた。

「ちょっとしたトラブルがありまして。
はい、大丈夫です。今日は直帰と言う事でお願いします。
はい。その件に関しましては・・・」
どうやら、久美子は帰社せず、直帰にしたらしい。

久美子が電話を終えるまで待ち、購入した店で、ヒールの修理も行っている
事を伝え、サンダルを渡す。

「ご迷惑をお掛けしました。今度何かお礼をさせて下さい」
「いえいえ。これから、仕事仲間になることですし、お気になさらずに」
「それでは、こちらの気がすみませんので、また後日にでも」
今までの態度を見る限り、久美子は借りを作らないタイプの人のようである。
俺は次の電車を待つべくホームに残り、久美子は駅ビルの方へ向かい歩き始めた。

改札へ向かう久美子のお尻からピンク色の下地の上にネズミのプリントが顔を覗かせている。
どうやら、先ほど転んだ拍子に、ズボンのお尻が破けたらしい。
ネズミさんプリントのパンツとは、年齢の割には可愛らしいパンツだ。

俺は、慌てて久美子に走りよる。
俺の走り寄る気配を感じてか、久美子が振り向き、怪訝そうな顔をする。
俺はそっと、小声で久美子に話し掛ける。

「あ、あの、ズボンの後ろ、破けてます」
俺の言葉に、久美子はお尻に手を当てたまま、耳まで赤く染める。
久美子は見た目よりも、純情なのかも知れない。
俺は上着を脱ぎ、上着を腰に巻くように進める。
久美子は自分の上着を巻くと言ったが、ここは俺も引かず、駅ビルも近いので一緒に行く、
ということで久美子も折れた。

俺たちは婦人服売り場に到着し、久美子は品定めに入る。
俺は普段見ないような彩りに目を奪われ、辺りをキョロキョロとしていると、
店員と視線が合った。
喪男の俺が居るだけで迷惑、と言ったような目で見られる。

久美子は、似たような色のサイドプリーツのスカートが見つかったらしく、試着室へと向かう。
ズボンとは違い、すぐに履いて帰れるように、裾直しの無いスカートを選んだようだ。
恋人同士ならば、彼氏も試着室の前に行き、似合うだの、似合わないだの話し合うところ
だろうが、残念ながら俺と久美子は、そういった間柄ではない。

ズボンから、スカートに履き替えるのか・・・などと、考えながら、久美子が試着室に入るの見て
いると、ある事に気付く。

着替えると言う事は、一時的にでもパンツ1枚になり、電車で悪戯するよりも、ひと手間省ける。
ひと手間省けると言う事は、その分悪戯する時間が長くなるのである。
そのことに気付いた俺は、さりげない仕草で試着室の方へ向かうが、傍から見ればかなり挙動が
怪しかったかも知れない。
俺は、試着室の傍に立ち、聞き耳を立てた。

シュルル カチャ。
何かをハンガーに掛けた音だ。恐らく、俺の上着だろう。ちゃんとハンガーに掛ける辺りが、
久美子の几帳面な性格を物語っている。

カチャカチャ・・・。
ベルトを外す音。

ヂー・・・。
チャックを下げる音だ。
音だけと言うのは、何とも想像力を掻き立てるものがある。
俺の息子が硬くなり始める。

シュルルル カサカサ。
どうやら、ズボンを脱いだようだ・・・。
時間を止めるなら今しかない!
俺は心の中で念じる。

「止まれ!」

店員の動きが止まり、周囲が静寂に包まれる。
俺は試着室のカーテンを開け、中を見る。

誰も居ない。どうやら部屋を間違えたようだ。

隣のカーテンを開けると、上半身にジャケット、下半身パンツ1枚の久美子が立っていた。
下着だけの姿よりも、今の状態に興奮を覚える俺は、変態なのかも知れない。

俺は試着室の中に入り、久美子の前に膝まづく。
目の前には、久美子はピンクのフリルが付いたパンツがあり、薄っすらとヘアーが透けている。

俺は久美子の股間に顔を埋め、力いっぱい匂いを嗅いで見る。
香水の匂いと共に、汗の臭いに混じった女性特有の甘ったるい匂いが、俺の鼻腔を擽る。

「はぁはぁ・・・」
興奮に息を荒げた俺は、久美子の股間から顔を離しパンツに手を掛ける。
パンツを膝まで一気に下ろす。
目の前に、久美子の逆三角形のヘアーが現れた。
俺は久美子の女性器に手を伸ばした。
割れ目に沿って指を動かし、やがて指が小さな突起物を触る。クリトリスだ。

俺は、両手でそっと割れ目を押し広げ、顔を近づける。
肉の割れ目に、小さな芽のようなクリトリスが見える。
割れ目に沿って、舌を這わす。
苦味と酸味の混じったような味が、舌先に広がり、舌の先で久美子のクリトリスを捕らえる。
クリトリスを重点的に舐め上げていると、少し大きくなったようだ。
俺はゆっくりと、久美子の膣内に指を挿入してみる。

くちゅ。
指先に久美子の体温が伝わり、指をゆっくり上下に動かしてみる。

くちゅくちゅ。
俺の唾液で湿った久美子の女性器から、いやらしい音が聞こえる。

俺の息子は極限までに膨張しているが、直立状態の久美子には挿入は不可能だ。
砂時計の砂は残り少ない。体制を変えてる時間は無いだろう。

ふと、久美子の足元を見ると、脱ぎかけのズボンがある。
恐らく、この後、脱いだズボンを取るために前屈みになるはずだ。
前屈状態ならば、今の状態より挿入は容易だ。
そう考えた俺は、久美子のパンツを戻し、素早く試着室の外に出る。

そして、時が動き出す。

どかーん。
「きゃっ」
びりりり・・・。ぺちん。

俺は、突然の衝突音に驚き、辺りを見回す。
試着室の横で転倒している警備員。
試着室のカーテンに絡まりながら、倒れている久美子。ピンクのネズミさんパンツが丸見えだ。

この状況から判断すると、恐らく、警備員が試着室にぶつかったのだろう。
その衝撃で、バランスを崩した久美子が、カーテンに掴まるものの、カーテンが体重を支えきれずに
現在に至る、と言ったところだろう。

「き、貴様ぁ〜!」顔を真っ赤にしたけ警備員が立ち上がり、物凄い形相で俺に掴みかかってくる。
俺は訳も判らず、警備員に締め上げられた。

「お客様、大丈夫ですか?」その背後では、店員が久美子を助け起こしているようだ。
「貴様が変質者だな!」更に俺を締め上げる警備員。

ここで、俺は状況を理解した。
どうやら、試着室の横で、怪しい行動をしている俺を見た店員が、変質者として、警備に連絡。
駆け付けた警備員が、俺に声を掛けようとした時に、俺が時間を止めた。
時間が動き出した時に、俺は元の位置には居らず、掴みかかろうとした警備員がバランスを崩し、
試着室に突っ込んだ。恐らく、こんなところだろう。

「ちょ・・く・・苦し・・は・・なせ・・・」怒りのためか、警備員が本気で俺を締め上げている。

「ちょっと、何をしているんですか! その人は私の連れです!
その人が何をしたというんですか!」
状況は理解できないものの、警備員に締め上げられている俺を見た久美子が、警備員に声を掛ける。
久美子の言葉を聞いた店員が、慌てて警備員を止めに入り、俺は締め付けから開放された。

「げほ、げほ・・・」
警備員の締め付けが、思いのほかきつく、俺は首を抑えながら警備員を睨みつける。
「何があったのか、説明して下さい!」腰にカーテンを纏った久美子が、店員に問い正す。

店員から説明を受けた久美子は、一度別の試着室に入り、スカートを履いて出てくる。

「この人は見た目は怪しくても、一応、私の連れです。
変質者に見えたとしても、仕方在りませんが、あそこまで暴力を振るうのは、
酷くありませんか?」
何気に酷い事を口走っていることに、久美子は気付いていない様子だ。

現在、俺らの周りには先ほどの警備員、店員、この店の店長、
デパートのフロアマネージャーだかが来ている。

俺のことを思いやってと言うより、自分が醜態を晒したことに対して怒っている久美子に、
警備員、店員、店長、フロアマネージャーが萎縮している。
特に、冷静になり自分がしたことの重大さに気付いた警備員は、見る影も無い。
基はと言えば、俺が原因である。

確かに、喪男が女性の入った試着室の横でニヤニヤして居たら、俺でも警備に通報する。
警備員の行動はやり過ぎだが、まぁ、被害者は俺だし。
俺はもう気にしていない、と言う事を伝え、何とか久美子をなだめる。
渋々ながら、怒りを納めた久美子と共に、店を後にした。

首締め事件のお詫びとして、店長からは、久美子のスカートとズボンの修理代。
フロアマネージャーからは、駅ビルの最上階にある展望レストランのお食事券を貰った。
高級レストランのお食事券なんて、一緒に行く相手も居ない俺が貰っても、宝の持ち腐れだ。
俺は久美子にお食事券をプレゼントしようとするが、
「あなたが貰ったものですので」の一点張りで、久美子は受け取らない。
ヒールとズボンの修理が終わる日にでも、食事をしましょう、と言う一言により、
何とか、お食事券の使い道も決定し、久美子と別れた。

俺は、「時間を止める度に何かしら事件が起こるな」などと考えながら、
自宅までの帰路に着いた。

自宅に帰った俺は、先ほどの試着室での行動を思い返し、自慰行為に耽った。
翌朝、枕元に転がる丸まったティッシュの数から、4回目の途中で眠りに落ちたらしい。
久美子が修理に出したパンスツース、ヒールは明後日には出来上がる。
明後日にはまた、久美子と会うことができそうだ。
週末ではないので、予約は必要ないかも知れないが、一応展望レストランに予約は入れておこう。

午前中、何度か社長から呼び出しがあり、いつものようにパソコン指導を行う。
いい加減、自分で調べると言う事を身に付けて欲しいものだ。
何度も、「昨日の事は秘密だぞ」と言ってくるところからも、昨日の事は大分、気にしているらしい。
何度目かの指導を終え、席に戻ると亜紀から昼食に誘われる。
昨日のようなことでも無い限り、一緒に食事に行くと言うことは無いのだが、秘密を共有する者として、
親近感でも沸いたのかも知れない。
俺は、別に断る理由も無いので、亜紀と2人で昼食に向かった。

昨日はパスタだったが、今日は蕎麦屋にした。
「俺、明日会社休むから、よろしく」注文を終えた俺が、亜紀に言う。
「通販で買ったアダルトグッズでも、届くんですか?」
「違うから! そんなもん、買ってないから!」
「隠さなくてもいいですよ〜。喪雄さんなら買ってても、可笑しくないですから♪」
全力で否定する俺を無視し、一人で、そうかそうかと、亜紀は妙な納得をする。
可愛い顔をして、なかなか酷い事を言うやつだ。
このまま、はい、そうです、などと肯定しようもんなら、亜紀のことだ、どんな尾ひれがついて
周るか判らない。

「明日、不動産屋に部屋の更新に行くんだよ。社長には、もう言ってあるから」
本当は別の理由で有給を取ったのだが、わざわざ亜紀に言う必要も無い。
別の理由については、番外編1を見て欲しい。

「な〜んだ。つまんないの〜」亜紀は口を尖らせ、注文したおろし蕎麦をかき混ぜながら言う。
ちなみに、俺はカツ丼、亜紀はおろし蕎麦を注文した。

「で、俺を昼食に誘った理由は何なんだ? 昨日のことか?」
俺の注文したカツ丼は、揚げているのか、なかなか来ない。
「そうそう、昨日の事、ノリちゃんに話したら、すっごい、大爆笑でしたよ〜!」
「お前、人に話したのかよ・・・。やっぱり、昨日の昼飯奢ってもらった意味、
判ってなかっただろ・・・」
「あ・・・」てへっと言うような感じでチロっと舌を出す亜紀。
「大丈夫ですよ〜。絶対に秘密ってことで言いましたから〜」
「いや、お前が秘密にしてないから・・・」
ノリちゃんとは、隣の課にいる、亜紀と同期の女の子のことである。
「ノリちゃんは、口が堅いから大丈夫だと思いますよ〜。そうそう、ノリちゃんと言えばですね〜・・・」
亜紀の話はあっちに飛び、こっちに飛びするので、聞いていて疲れる。
ノリちゃんの話をしているのかと思えば、何の脈絡もない犬の話になったり・・・。

30分後、ようやく俺のカツ丼がきた。亜紀はすでに、食べ終わっている。
「で、話って結局なんだったんだ? 昨日の事じゃなかったのか?」
ようやく着たカツ丼を食べながら、俺は亜紀に聞く。

「違いますよ〜。今、実はちょっと悩んでいるんです〜」
関係ない話で、30分以上も話してたのか・・・。呆れ顔で見る、俺の視線を余所に、亜紀は話を続ける。

「実は、元彼にストーカーみたいなことされてるんですよ〜」
「ストーカーみたい? どんな事されてるんだ?」
ストーカーとは、穏やかではない。こんなやつでも、一応同じ課の仲間である。
俺は真剣に話を聞く。

「主にメールと電話なんですけど〜、内容が〜、今日何時に起きただろ〜とか、
今のパジャマは、お前には似合わない〜とか」
どう見てもストーカーである。
被害者としての自覚が無いのか、亜紀はケロっとした顔で話す。

「まったく、人の趣味にケチ付けるな〜って感じですよね〜?」
亜紀は、俺のカツ丼からカツを一切れ摘み、ひょいと口に入れる。

「おま、俺のカツ・・・。それって、どうみてもストーカーだろ?
俺に相談するより、警察に相談した方がいいんじゃねぇか?」
俺はこれ以上亜紀にカツを取られないように、どんぶりを少し遠ざけながら言った。

「そうなんですけど〜、何て言うか〜、警察に届けると、ストーカーするような男と
付き合ってたって、みんなに知られちゃうじゃないですか〜」
遠ざけられたどんぶりを見ながら、亜紀は虎視眈々とカツを狙っている。

「そんなこと、俺に言われてもなぁ・・・」
俺は、亜紀の魔の手からカツを守るべく、箸で牽制する。

「喪雄さんだったら、盗聴とか〜、盗撮とか〜、してそうじゃないですか〜。
ストーカーとかもやってそうですし〜、何か良いアドバイスがあるかな〜って思って〜」

「な・・・。お前、俺をそんな目で見てたのかよ・・・」
喪男の自覚はあるものの、面と向かってここまで言われると、さすがの俺でも凹む。
亜紀は、そんな凹んだ一瞬の隙を見逃さず、再びどんぶりからカツを奪う。

「・・・で、俺に何をしろって言うんだ? 言っておくが、俺は盗聴も、盗撮もしたことないぞ?」
カツをふた切れ食べて満足したのか、亜紀はお茶を飲み始めたので、俺は安心して、食事を再開する。

「え〜、した事ないんですか〜? 使えない人だな〜」
「使えないって・・・。したこと有った方がいいのかよ・・・」
俺は脱力して、どんぶりを置いた。

「有った方がいいとは言いませんけど〜・・・」
亜紀はお茶を置き、またもやカツを奪う。完全に油断した・・・。
俺はまだ、カツをひと切れしか食べていないと言うのに、カツ丼のカツは、残りひと切れになっている。

「で、お前は俺に、何をしてもらいたいんだ? 秋葉原辺りで盗聴・盗撮発見用の機械が聞いた
ことはあるけど・・・」
俺はどんぶりをガードしながら、最後のひと切れを守る。

「そう、それですよ〜。それを使って、私の部屋を調べて貰いたいんですよ〜」
亜紀は最後のカツを狙い、臨戦体制を取っている。

「ちょ、ちょっと待て! 最後のカツだ。調べる、調べてやるから!」
「調べてくれるんですね〜? わーい。それじゃ、カツは許してあげま〜す」
俺のカツ丼なのに・・・。こうして、俺と亜紀のカツを巡る壮絶なバトルは終了した。

定時後、俺は亜紀と共に、亜紀の部屋へと向かう。
亜紀の部屋は、ロフト付きのワンルームで築3年。まだ引っ越したばかりらしく、
箱の空いてないダンボールが、いくつも置いてあった。

俺は午後に盗聴・盗撮についてのサイトを検索し、自分なりに知識を身に付けた。
調べる機械の方は適当な理由を付け、秋葉原で購入。
当然、領収証の宛名を会社にし、亜紀に処理させておいた。
使い終わってから、会社に置いておけば、業務上横領にはならないはずだ。多分。

夕食をマックで済ませ、店内でもう少し詳しい状況を聞き、メールを見せて貰う。
昼のパジャマについての話から、盗聴・盗撮、少なくとも、盗撮はされているはずだ。
昼間買った機械を見せながら、打ち合わせを行う。

亜紀の部屋に到着し、俺と亜紀は部屋に入る。
亜紀の体臭や、芳香剤?の匂い、お菓子の匂いなどが混ざったような甘ったるい匂いがする。
喪男の俺は、女性の部屋に上がるなど初めての体験だ。
かなり興奮しているが、悟られないようにしなければ。
部屋に入った俺は、早速発見器でチェックを行う。
1.2GHz帯盗撮器の周波数で反応あり。やはり、盗撮カメラが仕掛けられているようだ。

盗撮カメラの場合、電池では、電源供給が追いつかないので、どこからか電源を供給しているはず
である。俺は、コンセント周りを重点的に調べる。
テレビ・・・無し
照明・・・無し
ロフト上のコンセント・・・無し
エアコン・・・ビンゴ!

結局、エアコンと浴室の照明の2箇所にカメラは仕掛けられていた。
取り外したカメラを、亜紀に渡す。
電話なども調べたが、盗聴器はないようである。

盗撮器のタイプから、犯人である元彼は、恐らく200m圏内に潜んでいるはずだ。
亜紀に元彼の居場所を知っているか、尋ねる。

「知ってますよ〜。このマンションの一階に住んでますから〜」
「はぁ?」
元彼と別れたのが3ヶ月前。
ストーカー被害に合い始めたのが引っ越した翌日。
しかし、別れたはずの彼氏が住んでいるマンションに引っ越す意味が判らない。
俺はその理由を、俺は亜紀に尋ねる。

「元彼のご両親が〜このマンションのオーナーなんですよ〜。
部屋代安くしてくれるって言うから〜、引っ越しちゃいました〜。あは〜」

「あは〜じゃねぇよ・・・。まったく、何を考えているんだ?
そんなもん、盗撮して下さいって言ってるようなもんだろ・・・」

「初めから人を疑って掛かっちゃ駄目ですよぉ〜」
いや、この場合、そういう問題じゃないし・・・。この女との会話は、やっぱり疲れる。
俺は気を取り直し、カメラを持って元彼の部屋へと向かう。

ピンポーン。

「居ないみたいですね〜」
やはり、元彼は部屋には居なかった。
盗撮カメラを取り外すまでの状況は、観ていたはずである。当然と言えば、当然の結果だ。

「元彼の両親が、このマンションのオーナーって言ってたな?
両親の家は知ってるのか?」
現状、元彼が居ない状態で、部屋の前に居ても仕方が無い。
両親がオーナーならば、元彼の部屋の鍵を持っているかも知れない。
俺は亜紀に尋ねてみる。

「知ってますよ〜。付き合ってた頃に、一度遊びに行ったことがあります〜」

元彼の両親の家は、マンションから500m程離れた場所にあるらしい。
俺は亜紀を伴い、元彼の両親の家に行く。
亜紀の証言と携帯のメール履歴や着信履歴により、半信半疑ながら両親を説得。
元彼の部屋に行き、合鍵で中に入れてもらう。
モニターに接続された専用受信機。
盗撮カメラを電源に指し込み、モニターを両親に見せる。
モニターに映るこの部屋の映像。
これにより、元彼の両親も完全に納得したようだった。

知り合いのした事と言うことで、元彼の両親から元彼を説得すること言う形で、
一応ストーカー事件は、一件落着した。
亜紀の部屋に戻り時計を見ると、すでに午前0時を回っていた。

「あ〜、もうこんな時間かよ・・・。さすがに、終電は無いか・・・。
亜紀、この辺に24時間やってるような店無いか?」
亜紀は女の一人暮らし。さすがに俺を泊めてはくれないだろう。
俺は、始発まで間、漫画喫茶かファミレスで時間を潰そうかと思い、亜紀に尋ねた。

「夜食ですか〜? コンビニは100m先の角を〜」
「違うよ! ファミレスとか、漫画喫茶みたいなとこだよ」
亜紀の話を途中で遮る。

「この辺りは住宅街ですから、そんなお店は無いですよ〜」
状況が判ってるんだか、判っていないんだか、相変わらずの口調で亜紀が答える。

「マジかよ・・・。どうすっかな。タクシーで俺ん家までじゃ、距離あるしなぁ。
亜紀、始発まで泊めてくれないか?」一応駄目もとで言ってみる。

「嫌です」きっぱりと断る亜紀。まぁ、判ってはいたが・・・。
「おま・・・。自分のために働いてくれた俺に対して、幾らなんでも冷た過ぎね?
せめて、ベランダとか、玄関なら貸しますくらい言えよ・・・」
「じゃぁ、玄関の外なら♪」
こ、この女・・・。泣かす! 後で絶対に泣かしてやるっ
俺は、肩をぷるぷるさせながら、我慢をする。
漫画ならば、血の涙を流していたかも知れない。
そんな俺のオーラを感じてか、亜紀が妥協した。

「う、うそです・・・。冗談ですよ〜。ろ、ロフトの下でいいなら貸しますよ〜」
声の様子から、大分怯えているのが判る。

亜紀の妥協案で手を打った俺は、小腹も空いた事もあり、コンビニに買い物に行く。
ビールとツマミ、後は亜紀の頼みで、お菓子類いっぱい。

買い物を終え、亜紀の部屋に行くと鍵が閉まっていた。俺は予め借りた鍵を使い、
部屋の中に入る。

シャーシャー。
どうやら、亜紀はシャワーを浴びているらしい。
チャンス到来だ。今時間を止めれば、待っているのは全裸の亜紀。
亜紀の部屋はユニットバスなので、トイレと浴室が一緒である。
浴室に鍵が無いことは、トイレを借りたときに確認したから、間違いは無い。
止まった時の中で、シャワーの水に触るとどうなるんだ? 
ペプシの時はコップごと移動できた。
恐らく、移動する事は出来るだろうが、量が多い分ちょっと面倒だ。
俺は、シャワーが止まるまで待つことにした。

「喪雄さ〜ん、の、覗いたら駄目ですよ〜、覗いたら警察に突き出しますからね〜」
風呂の中から亜紀の声が聞こえる。
「覗かねぇよ!」
そう、覗く訳ではない。堂々と風呂に入り、亜紀に悪戯するつもりなのだから。

俺はテレビを観ながらビールを飲み、シャワーの音が止まるのを待つ。
ツマミは焼き鳥の缶詰。個人的には青い方が好きなのだが、売り切れだったらしく、
白い方である。
テレビには深夜番組が映っていたが、俺の耳にはシャワーの音しか聞こえていない。

シャー・・・。シャワーの音が小さくなり、やがて止まった。
ついに、待っていた時間が訪れたのだ。

止まれ! 俺は心の中で念じて、時間を止める。
テレビ画面の映像が止まり、辺りに静寂が訪れる。

俺は浴室の扉を開ける。
シャワーは洗面所の横にある。防水カーテンに亜紀の輪郭が写っている。
便器の上に籠が置いてあり、中には脱いだ下着や、着替えが入っていた。
俺は、黄色の丸まった布を手に取り、広げて見る。
プタさんプリント。相変わらずである・・・。
俺はパンツを籠に戻し、防水カーテンを開ける。

そこには、一糸纏わぬ亜紀の裸体。流れ落ちずに止まっている雫が光り受け綺麗に輝く。
胸は前に触った時に小さい事が判っている。
恐らく、AかBカップだろう。
俺は視線を亜紀の下半身に移す。申し訳程度の薄いヘアー。
亜紀に近づき、胸から触る。
揉み応えは無いものの、しっかりと張りのあるお椀型の胸だ。
乳首は小さめで、ピンク色。
指先で亜紀の乳首を摘んだり、伸ばしたりすると心なしか、乳首が硬くなってきたようだ。
次に、亜紀の胸に顔を近づけ、乳首を口に含み、舌で転がし始める。
亜紀の乳首は完全に勃起状態になり、硬くなった。
乳首を口に含みながら、右手を亜紀の下腹部に触ると、濡れたヘアーの感触が指に
伝わってきた。
亜紀の割れ目に沿って指を這わす。

くちゅ。
水で濡れた亜紀の女性器は、抵抗無く俺の指を受け入れた。
くちゅくちゅ。
亜紀の膣内は暖かく、俺はゆっくりと指を上下させる。

砂時計の砂は残り僅か。名残り惜しかったが、俺は浴室を後にする。
現在、部屋の中には俺と亜紀の二人きり。邪魔する者は居ないので慌てる事は無い。
俺は元の位置に戻り、そして、時が動き出す。

「あぅ・・・」俺の悪戯で体に違和感を覚えたのだろうか、浴室から亜紀の声が聞こえる。
「どうした?」
「な、なんでも無いです〜。ちょっと、足が滑っただけです〜」
亜紀の声から、明らかに嘘をついているのが判る。

カラカラ。どうやら、防水カーテンを開けたようだ。
俺は再び時を止める。

浴室に入ると、足を拭いている状態で亜紀が止まっていた。
亜紀は、前屈状態でこちらにお尻を向けている。
これぞ、俺が望んでいた体勢だ。
俺は亜紀のお尻を両手で、思いっきり広げる。
アナルはおろか、膣内まで見えそうだ。
俺は亜紀のお尻に顔を近づけ、舌でアナルを舐め始める。
風呂上りのためか、特に味はしない。
舌を動かし、今度は膣内へ舌を挿入する。
先ほどの悪戯のためか、膣内は明らかに水意外の味がする。
酸味と渋みと言うか、苦味が混ざったような味だ。愛液だろう。

砂時計の砂はまだある。
俺はお尻から顔を上げ、自分の指先を舐め、そして、その指をゆっくりと
亜紀のアナルへ挿入する。
第一関節までは抵抗が有ったが、それ以降はすんなりと指が挿入されて行く。
ゆっくりと指で出し入れする。
明らかに膣内とは感触が違う。

砂時計の砂が、残り少なくなっている。恐らくあと5秒程度か。
息子はすでに限界まで勃起しているが、今からズボンを脱いで挿入する時間は無い。
しかし、問題は無い。時間が動き出したら、再び止めればいいだけだからである。
俺は一度浴室の外に出て、ズボンに手を掛ける。
予め、ズボンを脱いでおけば、その分挿入する時間に費やす事が出来る。
そして、時が動き出す。

「ひゃぁ」浴室から、再び亜紀の声が聞こえる。
「どうした?」俺はズボンを脱ぎながら、白々しく声を掛ける。
「・・・み、水が、背中に・・・」可愛い言い訳だ。
挿入した後は、どんな言い訳をしてくれるのか、今から楽しみだ。

ズボンを脱ぎ終え、準備が完了した。後は時間を止めるだけだ。
俺が再び時間を止めようとした時、辺りから光が消え、静寂が訪れる。

「きゃっ」
「な、なんだ? 停電か?」辺りを見回すが、何も見えない。
「亜紀、大丈夫か?」急に暗くなり、テレビも消えたので、停電でも起きた
のだろう。

「大丈夫です〜。多分ブレーカーが落ちたんだと思います〜。暖房つけてたから」
「ブレーカーが落ちたのか」
「喪雄さ〜ん、ブレーカー上げて貰えますか〜?」
「ブレーカーはどこにあるんだ?」俺は、ズボンを履き直しながら問い掛ける。
「玄関の上です〜」

俺は手探りで玄関まで歩き、ブレーカーを探す。
ブレーカーはドアの上にあり、やはり一つ落ちていた。
ブレーカーを上げると、ぶーんと言う音と共に、視界が明るくなり、テレビから
音が聞こえる。

やれやれ。思わぬ邪魔が入った。俺は気を取り直し、浴室の方を向いた。

カチャ。
髪を拭きながら、亜紀が浴室から出てくる。
停電中に着替えを済ませたらしく、牛柄の着ぐるみパジャマを着ている。
元彼じゃないが、俺でも趣味が悪いと思う。
着替えられてしまったのでは、今から時間を止めるよりも、亜紀が寝入るのを待って
からの方がいいだろう。

俺は一旦諦め、ビールを飲みながら亜紀が寝入るのを待つことにした。
亜紀はパジャマ姿のまま、俺の横に座り、なかなか寝ようとしない。
さすがに、酔いが回ってきたのか、俺はトイレに行く。

「それじゃ〜、私寝ますね〜」亜紀はようやく寝る気になったのか、ロフトに上がる。
俺はトイレから戻り、残りのビールを一気に飲み干し、次のビールを開ける。
焦る事は無い。亜紀が完全に眠りに落ちてからでも十分だ。

俺は亜紀の寝息に神経を集中する。5分位経過すると、亜紀の寝息が変わった。
どうやら、完全に眠りに落ちたようである。
ロフトの階段までは三歩も歩けば到着する。
俺は気を静め、静かに立ち上がろうとした時、急激に眠気が襲ってくる。
ここで眠ってしまう訳には行かない!
俺は這いつくばりながらロフトの階段まで行き、ロフトに手を掛けるが、ついに力尽きて
眠りに落ちる・・・。

「喪雄さ〜ん、朝ですよ〜。起きてくださ〜い」
顔をぺちぺちと叩かれながら俺は目覚めた。頭の中がぼーっとしている。
亜紀はすでに出勤の準備を済ませたらしく、牛柄パジャマから着替えている。

「頭がぼーっとする・・・」
「え? 睡眠薬の量が多かったのかな〜?」
「ん〜・・・。ん? 睡眠薬?」頭を掻きながら俺が聞き返す。
「はい〜。寝てるところを襲われないように、ビールに睡眠薬を入れました〜」
チロっと舌を出しながら、亜紀が改心の笑顔で俺にVサインを出す。

「睡眠薬って・・・。なんで、そんなもん、持ってるんだよ・・・
つーか、酒に睡眠薬って、俺を殺す気か! ※1」

「最近、元彼ストーカー事件で良く眠れないんで、お医者さんに行って貰って来ました〜
さぁ、もう出勤しますので、起きて下さ〜い」
俺は亜紀に無理やり起こされ、亜紀の部屋を後にする。
亜紀は会社へ、俺は休みを取ってあるので、自分の家へと向かう。

「昼まで寝な直すか・・・」俺はボーっとする頭で自宅までの帰路に着く。

後日談であるが、元彼は両親からこっぴどく怒られ、部屋を追い出されて、今は両親と
共に暮らしているとのことだ。

※1:別にアルコールと睡眠薬を同時に服用しても、死ぬことはないらしいですが、
直前の記憶を無くしたり、翌日に眠気を残すなどの副作用がありますのでご注意
下さい。

木曜日の夕方。

現在、俺と久美子は展望レストランに一室に来ている。

亜紀のストーカー事件であるが、元彼の両親から部屋代を安くして貰う事で
話がついたらしい。
両親にまでストーカー行為がバレてしまった元彼は、現在両親の家で引き篭り状
態に陥ったらしいが、自業自得だろう。

待ち合わせの時間10分前にデパートに到着。
トイレに入り、身だしなみをチェック。
今日の俺は珍しく色物のワイシャツ。スーツはグレーでストライプが入ったもの。
これでも一応、精一杯のオシャレをしているつもりである。
髪型を整え、レストラン前に行くと、紙袋を持った久美子がすでに到着していた。
紙袋の中身は修理品だろう。
久美子の服装は濃い紫のカシュクールスーツに5cm位のヒール。目の細かい網タイ
ツである。

俺がレストランで名前を言うと個室に通される。
平日ということで、個室が予約できたのだ。
部屋の中は三畳位だろうか、窓の外から中央公園の夜景が一望でき、
人気のデートコースの一つになっているらしい。

俺と久美子は席に座り、メニューを見る。
メニューには、ファミレスのような写真は無く、料理名が日本語と英語で書いてある。
説明を読んでみるが、今ひとつどんな料理なのか判らない。

「この店は初めてですか?」
メニューを見て悪戦苦闘している俺の姿を見かねたのか、久美子が聞いてくる。

「はい。普段はファミレとか、ラーメン屋ばかりなもんで・・・」
こんな高級そうなレストランなんか、生まれてから一度も来た事なんて無い。
俺は頭を掻きながら答えた。

「そうですか。それでは、この『シェフお勧めのメニュー』と言うのにしましょう。
一品の量が少なめですが、その分色々な料理が楽しめますよ」
「あ、じゃぁ、それでお願いします」
「あとは、食前酒ですね。ワインはお好きですか?」
「あ、いや、嫌いじゃないですが、普段ワインとか飲まなくて・・・」
「それでしたら、アイスワインを食前酒代わりに頂きましょう。
甘くて美味しいですよ」

ほとんど久美子に任せきりだが、何とか今日のメニューが決まった。
オードブル、サラダ、スープとコース料理は進むが、喪男な俺は何を話していいか判らず、
話す内容は仕事に関連したものばかり。

趣味の話を振ってみるものの、ゴルフ、ダイビング、海外旅行などなど、
やはり、俺には縁の無い話ばかりだ。

唯一共通の話題で盛り上がれたのは、社長のヅラ。
社長が『あの事件』をかなり気にしてることを伝えると、
「事故ですので、気にしてませんよ」との優しいお言葉。
あとで社長に伝えてやろう。

料理もいよいよ、メインディッシュ。
魚料理の皿を平らげ、肉料理に取り掛かる。

キコキコキコ・・・。
肉をナイフで切ろうとしているのだが、なかなか切れない。

「それ、お魚用のナイフですよ」
肉料理と格闘している俺を見て、久美子が指摘する。

「え? あ、あはは。なるほど。切れない訳ですね」
俺は苦笑しながらナイフを持ち替えようとする。

カチャーン。
俺は手を滑らせ、ナイフを落としてしまった。
普通、レストランなどでナイフやフォークを落とした場合、ウェイターなどが拾ってくれる。
そんなことも知らない俺は、テーブルの下に手を伸ばし、落としたナイフを拾おうとする。

「あ、拾わなくても・・・」
テーブルマナーも知らない俺に、恥をかかせないようにとの気遣いか、
久美子は言いかけた言葉を飲み込む。

そんな久美子の言葉が聞こえ、俺は久美子の方を向くと、
テーブルの下から久美子を見ると、スカートの中が見える。
久美子が履いているのはパンストタイプの網タイツだと思っていたが、
タイツは太ももまでで、その先は薄紫のパンツである。
ガーターベルトを使用しているらしく、フリルの付いたベルトのようなものが見えた。
動きが止まった俺を見て気付いたのか、久美子が慌てて股を閉じる。

「あ、す、すみません。み、見るつもりじゃ・・・」

ごち・・・。
「はぅぁ」
俺は慌てて起き上がるが、テーブルに頭をぶつける。
テーブルは硬い樫の木製で、床と固定してあるので上の料理は無事だったが、
その分かなり痛い。
俺は頭をぶつけた衝撃で、床にうずくまる。

久美子は慌てて俺の横にしゃがみ込み、声を掛ける。
「だ、大丈夫ですか?」
「いたた・・。だ、大丈夫です」
頭を上げた位置が運悪く、俺の顔がしゃがみ込んだ久美子の膝の間に入る。

「きゃっ」
むぎゅ〜。
久美子は慌てて膝を閉じたため、俺の顔が久美子の太ももに挟まれる。
久美子は同様しているのか、膝を閉じる力を緩めない。
俺は久美子の太ももから逃れるために、頭を上下に動かしながら、
久美子の太ももを叩く。

久美子もようやく状況が飲み込めたのか、膝を閉める力が少し弱まった。
その瞬間、頭を動かしていた俺の顔が久美子の股間に直撃する。
久美子はバランスを崩し、床に尻もち。
俺もバランスを崩し、スカートの中に頭を突っ込んだ形になってしまった。

俺は謝り、頭を股間から離そうとするが、スカートに頭を突っ込んでいる
ので、思うように動く事ができずに、久美子の股間をぐりぐりする感じになって
しまう。
「×○△※▲!」
久美子の股間に俺の声は声にならず、振動だけを久美子の股間に与える。
「あ、ひゃぁ。ぁぅ・・・」
久美子は悲鳴とも、喘ぎとも言えない声を出す。

数秒後、ようやく俺は久美子の股間から開放される。
二人の顔は真っ赤。
しばらく、気まずい静寂に包まれるが、とりあえず、食事を再開することにした。

「す、すいませんでした・・・」
「い、いえ。私の方こそすみませんでした。苦しくなかったですか?」
久美子の顔はまだ赤い。
俺は赤くなった久美子の顔を見て、さっき事を思い出し息子が反応し始める。

「大丈夫です。あ、くぅ〜・・・。」俺は照れ隠しに、頭を掻こうとするが、
先ほどぶつけた所を触ったらしく、痛みが走る。

「先ほどぶつけた所ですか?」
久美子が俺の横にきて、手で頭を抑えながら傷口を見る。

「少しタンコブになってますね。出血はしてないみたいです」
久美子は俺の頭を動かしながら、傷が無いかを確認する。
俺の頭は久美子の胸にぐりぐりっと、押しつけられ、息子が更に膨張する。
俺の息子は悲鳴を上げた状態のままだ。

今回、俺は久美子と食事をするにあたって、一つに計画を立ててきた。
計画の内容は、簡単に言えば、久美子を良い潰すことである。
そのために、ガチャぽんカプセル(小さめ)にスピリタス(アルコール度数96%の
ウォッカ)を入れ、隙を見て久美子の飲み物に入れることが必要である。
このスピリタスと言う酒は、単体で飲むと結構キツイが他のものに混ぜると意外
と気にならないのである。但し臭いはあるのであまり入れすぎると違和感を感じる。
用意したカプセルは5つ。
久美子が余程の酒豪でもなければ十分な量だ。

久美子が席に戻るために、後ろを向いた瞬間にカプセルの一つを久美子のワイングラス
に入れる。

「さ、食事を続けましょう」
「そ、そうですね」
まだ俺と久美子の会話はぎこちない。
俺がワインを飲むと、久美子もそれにつられたのか、ワインを飲む。
一瞬ワインを飲む動きが止まった気がしたが、久美子はそのまま飲んだようだ。

久美子が俺のグラスにワインを満たし、久美子のグラスには俺がワインを注ぐ。

止まれ!
俺は時間を止め、2つ目のカプセルを久美子のグラスに入れる。
頭に、ふと悪戯のアイデアが浮かぶ。
確か、女性器の粘膜はアルコールの吸収が早いと聞いた事がある。
スピリタスを少し入れてみたら、酔いが早くなる?

俺は久美子のテーブルの下から久美子の足元に行き、カプセルを開ける。
スピリタスはカプセルのまま固まっているので、少量千切ぎる。
久美子の股間に顔を近づけ、薄紫色のパンツを指で少しずらす。
先ほど俺が久美子の股間に与えた振動のせい?か、少し濡れているようだ。

くちゅ。
千切ったスピリタスを指先で久美子の女性器に押し込むと、すんなりと受け入れた。
くちゅくちゅ。
俺は久美子の女性器の感触を味わう。
名残り惜しいが、時間が動き出す前に俺は席に戻り、ワインを注ぐ体勢を取る。

そして、時が動き出す。

ワイングラスを満たした俺は、久美子の方を見てみると、久美子はうつむきながら、
何やらもぞもぞと動いている。

「どうかしましたか?」
「い、いえ。何でもありません」
顔を上げた久美子の額には、冷や汗が流れていた。

すっかり忘れていたが、スピリタスというのは、アルコール度数が高いだけあり、
皮膚に塗ると注射前の消毒などと同じ感じがするのである。
久美子はそれを直接女性器で感じているのだから、冷や汗をかくのも当然の話だ。

「ちょっと、暑いですね」
久美子は手をパタパタさせながら、ワインを飲む。

「そうですね」
俺は適当に相槌を打ちながら、今久美子に起こっていることを想像した。
アルコール消毒のヒリヒリ感から、粘膜で吸収して火照ってるのかも知れない。
一時期沈静化していた俺の息子が再び元気を取り戻す。

久美子はワイングラスを置き、メインディッシュの肉を食べようと口を開けたときに
再び時間を止める。

ちょうど口を開けた状態で止まる久美子。
まずは、ワイングラスにスピリタスを入れる。
そして、俺は久美子の傍に立ち、チャックを開ける。

ジー。
チャックを開けると息子が勢い良く飛び出す。
俺は久美子の口に息子を入れる。

ぬるっとした口の粘膜の感触が俺の息子に伝わる。
口の中に少しアルコールが残っているのか、多少ヒリヒリする感じがしたが、
気にせず久美子の口の中に息子を出し入れする。
初めてのフェラで、俺は20秒も持たずに射精してしまう。
急いで息子を紙ナプキンで拭き、元の状態に戻る。

そして、時が動き出す。

「げほっ」
久美子が膝ナプキンで口元を抑え、むせ返る。
どうやら、俺の射精した精子が喉の奥に入ってしまったようだ。
俺は久美子の傍に行き、背中を摩りながら、ワイングラスを進める。
しばらくして、久美子が落ち着き、ワインを飲むが、まだ目には涙が溜まっている。

「す、すみません、ちょっとお手洗いに・・・」
そう言って席を立った久美子の声はまだ裏返っていた。

久美子が席を外すと俺は、久美子のナプキンに吐き出された精子を拭き取り、
ウェイターを呼んで新しいものと交換する。
証拠隠滅である。

戻って来た久美子は大分落ち着きを取り戻していた。

「大丈夫ですか?」
「はい。もう大丈夫です。あら?」
久美子の膝ナプキンを取り上げる手が止まる。

「あ、ウェイターに頼んで交換して貰いました」
「ありがとうございます」
久美子は俺が善意で交換したと勘違いし、微笑みながらお礼を言い、
俺はちょっと罪悪感に囚われた。

メインディッシュンの肉も最後の一切れになり、これを食べ終わったら
デザートになるだろう。
当然デザート時にはコーヒーか紅茶辺りになるだろうからグラスに入った
ワインは飲み干すはずだ。

止まれ!

俺は時を止め、ワインにスピリタスを混ぜる。
久美子は大分酔っているのか、ワインの中のスピリタスを気にすることは
なくなった。

さて、残り時間はお楽しみの時間。
俺はテーブルの下に潜り込み、久美子の股間に顔を近づける。
久美子の薄紫色のパンツに染みが見える。
鼻を近づけ臭いを嗅ぐと、アルコールの臭いがする。
先ほど久美子の女性器に入れたものが逆流したのだろう。
俺は久美子のパンツをずらし、再び指を入れる。

くちゅちゅ。
先ほどより明らかに濡れ、熱を帯びている。
俺は舌を伸ばし、久美子の女性器に挿しいれる。
アルコールの味と微かな酸味。
舌を動かすと味が更に濃くなる。
くちゅちゅくちゅ。
俺は我を忘れて舐め上げる。
砂時計の残りが僅かになり、俺は元の位置に戻る。

そして、時が動き出す。

久美子は酒のせいで間隔が鈍くなっているのか、あれだけ激しく舐め上げたにも
関わらず、それほど違和感は感じていないらしいが、目元が明らかに潤っている。

「もしかして、感じてるのか?」俺はそんな疑問を抱きつつ、デザートに手を付ける。

デザートも食べ終え、俺と久美子が席を立つと、久美子が少しふらついた。
俺は慌てて近寄り、久美子の肩を抱く。
大分スピリタスが効いたのだろう。肩を抱いた手に久美子の熱が伝わる。
大分火照っているようだ。

「大丈夫ですか?」
「えぇ。大丈夫です。少し酔ったみたいで」
「下に公園がありますから、少し覚まして帰りましょう」
「そうですね。少し覚ましたいです」
下心丸見えの俺の提案に久美子が乗ってきた。

食事券で会計を済まし、俺と久美子はエレベーターで下に下りる。
エレベーターの中で久美子はずっと俺に寄り添っているところを見ると、
本格的に酔っているようだ。

俺と久美子は公園に向かうが、久美子は千鳥足になっており、俺が支えて
いないとまっすぐ歩けない状態になっている。
ベンチを見つけ久美子を座らせ、俺もその横に座る。

「大丈夫ですか?」
「ん」
久美子は短く答え、そのまま俺の肩に頭を預けてくる。
意外な展開に動揺した俺は辺りを見回す。
向かいのベンチにはカップル。同じような体勢だが、男が女の腰に手を回している。

「ここは、俺も手を回すべきか?」
俺は心の中で自問自答し、手を回す事にした。
ぎこちなく久美子の腰に手を回す。
久美子の頭が持ち上がり、俺の顔を見る。
俺も久美子の方を向き、俺と久美子が見詰め合う。
しばらくの沈黙。

沈黙の間に俺の乏しい知識のデータ−ベースをフル検索。
ドラマなんかじゃ女が目を閉じて、その後はキスだ!
ドキドキしながら、久美子が目を閉じるのを待つ俺。
久美子が目を閉じた。

今だ! 心の中の俺が叫ぶ。
俺が顔を近づけた瞬間、久美子が下を向く。

「うぇ〜・・・」
俺の膝に生暖かい感触、久美子の嘔吐物が膝に池を造ったのだ・・・。
俺は慌てて立ち上がったが時既に遅く、パンツの中まで染みてしまったようだ。
久美子が吐き終わるまで背中を摩り、俺は水道に向かう。
必死で洗うが、ズボンを履いたままでは限界がある。
大体汚れを落としたところで諦め、久美子の元へ戻る。
久美子は吐き疲れたのか寝入ってしまっていた。

一時間程立つと久美子が目覚めた。
吐いて酔いが抜けたのか、意識ははっきりしており、必死で謝る。

「すみません、すみません。クリーニング代は出しますので」
「そんなに気にしないで下さい」
久美子が悪酔いしたのは、当然俺のせいである。
俺が怒れる筋合いはまったくないのだ。

必死に謝る久美子を慰め、俺と久美子は帰ることした。
今の俺じゃ電車で帰るには厳しい。
それを察してか、久美子がタクシーを拾う。
俺がタクシーに乗り込むと、久美子がお金を渡してきた。
俺は断るが、これ位させて欲しいと必死に頼み込む久美子。
俺は根負けし、お金を受け取った。
ドアが閉まりタクシーが動き出し、俺の家へと向かう。

帰り道中、タクシーの窓が開きっぱなしだったのは言うまでもない。

inserted by FC2 system