イカリングその4(33停止目)
―――― 200X年 2月1日 AM 6:49
東京都 警視庁、通報管理センター ――――
ここは東京都内から寄せられる全ての通報が受理、管理、そして応答される場所である。
1月も終わり、新しい月を迎えた日の早朝、ひとつの事件が警視庁に通報された。
そして、この事件が東京都、警視庁全体を巻き込んだ史上最悪の殺人事件になるとはまだだれも知らないでいた。
―――― 200X年 2月1日 AM 9:27
警視庁 刑事事件捜査部第一課オフィス ―――
「おはよう御座います。」
彼は宮沢雄太、警視庁刑事一課に勤める巡査である。
彼がこの仕事に就いてからもう直ぐで1年が経とうとしていた。
彼はこの仕事にやる気を見出していたし、充実していると考えていた。
そして、ここは警視庁の刑事部捜査一課のオフィスである。
ここで様々な事件が集められ捜査されている、いわば心臓部の様な所だ。
「おはよう、宮沢君。 早速だが殺人があった
来て早々すまいないが現場に行ってくれ」
宮沢と呼ばれた男は項垂れてため息をして、今入って来たばかりのオフィスを後にした。
―――― 200X年 2月1日 AM 9:42
東京都 目黒区、目黒川 ――――
そこには野次馬が集まっており、数人の検視官たちが遺体を引き上げていた。
「すいません、警視の者ですけれども確認いいですか?」
宮沢はそう言い警察手帳を見せた。
検視官たちは素直に遺体に被った布を下ろした
被害者は女性、年齢は二十台前半、所持品は携帯のみ
その携帯から被害者の女性の名前が判明した。
名前は 金島亜里沙、年齢は23歳
電話帳にあった会社と思われる所に電話したところそこで働いていた事がわかった。
死因は腹部をナイフで何回も刺されたことによる内臓損傷、及び多量出血。
死亡後、この川に投げ込まれた模様
「これが今のところ判っている事です。」
検視官が書類を読み終え宮沢を見て言った。
その表情はあまり優れていない、当然といえば当然である。
溺死ではないと言えども水に浸かっていた水死体はあまり見て気分のいい物ではない。
「財布が無いなら強盗殺人って事でいいんじゃないですか?」
「まあ・・詳しい事を今は言えませんがその様ですね。」
「それじゃあ、報告書が届くの待ってますんで。」
宮沢巡査は苦虫を噛み潰した様な顔で残りの簡単な手続きを済ませ、現場を後にした。
帰りのタクシーの中、彼は考えていた。
そう、事件の事について。
実は最近、似たような手口の殺人が2件あったばかりなのだ。
関連性は特に認められなかったが同一犯の仕業では無いとは言い切れない。
その事で宮沢巡査は頭を痛めていた、いや正確に言えばその事で上司に怒鳴られるかもしれない事に。