イカリングその1(18~21停止目)

 

床に転がる二つの死体、特殊部隊と思わしき服装に身を包んだものが差し伸べる手
そして、少しずつ壊れ始め終わりをつげる日常....
いつから運命の歯車は狂い始めたのだろう....

______  6時間15分前 ___________________
ピンポ〜〜ン♪♪♪

鳴り響く玄関のチャイム
おや?、もう10時を回っている言うのにいったい誰だろう?
俺は疑問に思いつつドアを開けた、そこには寒さに凍えた里香がいた

「どうしたんだ里香?!」
「ごめんね、でも他に頼れる人がいなくて....」
「いいよ、とりあえず入りな」

ただならぬ様子を察して
俺は里香を家に向かいいれた

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 カチっ

PCのモニターを消す
「なんだこのエロゲ、展開はやすぎwwww」

俺は喪坂俊彦、高校3年生で青春真っ盛り...の、はずなのだが
見てのとおりエロゲばっかりやって彼女いない歴=年齢の王道を謳歌してしまっている....
今も彼女がいない悲しみをオナニーにぶちまけようとしている所だ
「さあてっ♪ ティッシュ、ティッシュっと♪♪」

前準備を怠らないのがプロのオナリストの基本である
机にティッシュを置き、いつもの体勢、いつもの緊張感を味わいながらゆっくりとモニターをつける

ピンポ〜〜ン♪♪♪

全神経を集中してものを握ろうとした瞬間にそれは鳴った
「ったく、なんだよもう 人のお楽しみタイムを邪魔しやがって」
めんどくさいし、居留守でも使うか
.............

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!!!!
「だああ!! うるさい!!」
まったくしつこい奴だ、俺は仕方なく脱いでいたズボンを履き玄関にいった

まったく無礼な奴だ、少し文句言ってやろうと思いながら扉を開けると....
「こんばんは〜〜」
「こっ、こんばんは...」

期待を当然のごとく裏切り男が一人立っていた
黒い髪、黒い瞳、身長は174くらいだろうか?
さっきからニコニコと俺の顔を見ながら何も言ってこない
「あの〜、ご用件はなんですか?」
「ああ、そうだった」

男は忘れていたように言い、笑顔でそして簡潔に目的を言った
「今日は、ちょっと君を拉致しに来ました」
「ああ、そうですか........
え? ちょっwwwこれなんてエロゲwww? じゃなくて展開?」

「無駄な抵抗はせずに僕についてきて下さいね?」
そういうと同時に男は俺にむかって何かを突きつけた
.....あれか、 この黒い物体は俗に言う チャカって奴ですか?
「とりあえず目隠しをさせてもらうよ」
男がそういうと後ろから背の高い屈強な男たちが出てきて俺に目隠しをした
「ついでに眠ってもらおうか」
「くっ! 痛ってえ!!」

突然の事にパニックになりながらも注射器ののような物でさされてたちまち意識を奪われる
消え行く意識の中で、悪魔が人間をあざ笑うかの用な男の笑い声が頭に響いた....

「うっ...」
どこだ此処は?  
あたりは真っ暗で何も見えない、どうやら椅子に座らされているようだ
しかも手にはご丁寧にも手錠までしてある
-----   カチャ ------

突然明かりが付いた、眩しくてとても目を開けていられる状態ではない
「気分はどうかね?」

太く低い老人の声が尋ねた、その人物は目の前にいるらしいがまだ瞼を開けれる状態ではないのでわからない
少しずつ目が慣れ始めてきた、とりあえずは真っ白で四角形の部屋の真ん中に座っているらしいと言う事だけはわかった
「やあ、こんにちは喪坂君」

予想どうり、腰を曲げた背の低い老人が立っていた
「君には聞きたい事が山ほどあってねえ」

老人は不気味な笑顔で言う
なんの事だ、俺は拉致してまでこいつらが欲しがる事なんてなんにもしらない
「まあ、それはまた後日、ゆっくりと聞くとしよう」

老人がまたしても不気味な笑みを浮かべながら つれていけ と言うとドアから男が3人でてきた
2人はなにやら物騒な銃をもっている事からして警備らしい、何処かに移されるって事か
部屋に一つしかないドアから外の通路に出た
さっきの部屋とはうってかわって廊下の通路は暗くテレビで見るような刑務所が停電したような感じだった
先に進むとまんまの豚箱があった、いわゆる牢獄である...
「此処がお前の部屋だ」

男は部屋とは呼べない代物に俺を押し込むと2人の警備を残してどこかへ行ってしまった

さあて、どっきりにしては妙にオチまでが長すぎる
なんでこんな事になったのかを考えてみよう
最初に変な男が来て、俺を拉致して、此処に閉じ込められた
「って意味わかんねえ〜〜〜〜〜!!!」
「静かにしろっ!!」

怖い警備のおじさんに怒られてここはおとなしく黙ることにした
「はあ、もうなんなんだよいったい」

俺は諦めてベッド(これも刑務所にあるような感じの粗末なもの)に横たわった
どれくらい時間がたったろう、多分1時間も経っていないのだろうが3時間以上はここに居るような気がする
することなどもちろん無いので考えにふけるしかなかった
俺が何をしたと言うのだろう
普通に生きてきて、これからもそうして、静かに死ぬだけの人生だと思っていたのに... 親父みたいに...

「そういえばもうすぐ命日だな....」
誰に言うでもなく一人でつぶやく
日々の仕事に終われて忘れていたがもうすぐ母さんと父さんの命日だ
「もう2年になるのか....」
空虚な空間に重い独り言だけが鳴り響く
沈黙が少し続いたあとで、俺はゆっくりと瞼を閉じ静かに眠りに落ちた
はずだった。 

 ガンッ!! ガンッ!! ガンッ!!
突然の耳をつんざく銃声らしき爆音に反応して飛び起きる
「ぐわっ!」

誰かが放った銃弾は一人の警備員の頭を見事に撃ちぬき、もう片方の足を血だらけにした
銃弾を放った主はこちらに徐々に近づいてくる

________ 戦慄が体中をかけめぐった______________________

一人の警備員を殺し、もう片方の足を打ち抜いた何者かは足を引きずり逃げようとする警備員を蹴り倒し頭に銃口を突きつけ、
引き金を引いた
先ほどと同じ音がこだまして泣き叫んでいた警備員が静かになった
特殊部隊のような服装に身を包んだ何者かは俺の牢獄の鍵を銃弾で破壊すると
手を差し伸べながら、こう言った

「お前が喪坂俊彦だな、 私と一緒に来てもらう」

人生という名の歯車は簡単に狂わせることが出来る
平凡だった日常はいとも簡単に音を立てながら崩れてゆく

俺の名前は喪坂俊彦
高校3年生、彼女いない歴=年齢、特に記すべき事はなし
ご覧のとおり、どこにでもいるモテナイ高校生である

だが俺の日常はある男の突然の訪問によりいとも簡単に崩れ去った
そう、その男とは....いま俺を殺そうと目の前でニヤついているこの男の事だ....

「喪坂クン、君の噂は聞いているよ。彼等が作った最高傑作であり欠陥品、僕がこの世から完全に消去してあげよう」

男はその黒い目をギラつかせ、皮肉な笑みを浮かべながら襲い掛かってきた....

_________________ 23分前  _____________________

「はあ、はあ」

こんなに走ったのは学校の体育祭以来だ
特殊部隊と思わしき誰かに 救助?? さてた俺はこの建物から逃走すべく出口へ向かって走っていた
それにしても奇妙な所だ、迷路のように同じ様な廊下がずっと続いている
小さな子供をつれてきたら5分で迷子になるに違いない

少し走っていると何やら研究室みたいな部屋にはいってしまった
「気味悪いな...」
思わず口にでる、何やら内臓のような物や高価そうな実験装置がずらりと並べてあり
天道虫がぎっしりと詰まったガラスのショーケースの様なもあった
まるでバイオハザードの1シーンみたいだ
「ここはどこなんですか?」

ずっと気になっていた事がこの気味の悪いものたちがきっかけとなって出てきた
「ここは動物、虫、植物、さまざまな物を研究していたラボだよ。覚えてないかい?」

男から帰ってきた答えはさらに深い謎をよんだ
見に覚え??  何を言ってるんだ、こんな所生まれてこのかた来た事も無い
どうゆう事だ??
男に更なる質問を投げかけ用とした時、突然うしろの方で爆発が起こった

「うわっ!!」

俺と特殊部隊の男はとっさに床に伏せる
「見つかったか...」
男はしまった、という表情で後ろを振り返った
だが、そこに人はいなかった
いや、人より危険な何かがものすごい数と勢いで飛んできた

それはごく一般には全く危害はなく、逆に害虫を食べてくれる虫として重宝されている
だが、俺の目にうつったそれは違った
何かにふれた瞬間に爆発し、瞬時に対象を黒こげにできる破壊力を有していた
そう、先ほどみた天道虫である
「走れっ!!!」
特殊部隊の男が叫ぶと同時に走り出す
前に見えるドアまでは15メートル弱
虫はすでにこちらから10メートルに満たない所にいる
後ろの廊下を吹き飛ばしながら向かってくるそれはまるで罪人を追いかけて来た地獄の使いのようだった
「火災が確認されました、5秒後ににCブロックは物理的に閉鎖されます」

機械的な音声の後に目の前にあるドアが閉まり始めた

5 俺と特殊部隊の男は全力で扉にむかって走った

4 虫たちはすぐ後ろまで来ている、捕まったら遺体も残らないだろう...

3 やばい、ドアがもう半分ほどしまりかけている

2 もうだめだ、追いつかれる

1 瞬間、爆発音が途絶え虫と扉の動きが止まったような気がした 

0 俺と特殊部隊の男は爆風を背に受けぎりぎりでドアの向こう側に滑り込んだ

ガタンっ

ドアが完全にしまり、向こう側ではしきりに爆発が起きている
「はあはあ、死ぬかと思った」

「まったくだ」

安穏のため息をつき、乱れた息を正すことに専念した
あれは何だったのだろう? 爆発する天道虫なんて聞いたこともない
それ以前に生物が爆発するなど....
「そろそろ行くぞ」

特殊部隊の男は考えをさえぎり、目の前に現れた大きな扉を指差していった
そこには非常階段らしき螺旋階段があった
階段を上ること3分、やっと最上階まできた
どうやらこれが出口らしい
「うっ!!」

扉を開いた瞬間に来た突然の強風に驚いた、どうやらここは屋上らしい
「ここからどうやって逃げるんですか?」
「もうすぐヘリが来るから待っていなさい」

強風が吹き荒れる中、特殊部隊の男に聞くとそっけない答えが返ってきた
なんとも難儀な事だ、こんな強風の中でヘリは大丈夫なのだろうか?
などと考えている内にいかにも軍用ヘリといったごついヘリがこちらに近づいてきた
「さあ、行こう」

そして、俺はヘリと一緒にこの奇妙な建物を後にした。 はずだった...

時を止めたい、それは誰もが一度は願った事があるであろう幻
だが時間は絶対に止まる事は無い
何故なら時間は絶え間なく流れ続け始まりも終わりも無いからだ
人間、そして様々な生物、またはこの世の全てのものが時をつくり、従う運命にある
この世のものである以上、時に従わなければいけない運命を科せられている
だが、俺は背いてしまった・・・・

それは俺がこの世のものである事を放棄した瞬間とも言える
何故なら俺は今、この世に存在しない時間の中にいる
そう、止まった時間の中に....
異変に気づいたのは死を覚悟した時だった、
空中に静止したヘリの破片、落下直前にそれは起こった
爆発さえも止まった中で混乱しながらも人を抱えて4メートルほど離れた地面に着地する
木々が鬱蒼と生い茂る森は自分たちを歓迎してくれてはいない様だ
まるで、招かれざる客人を冷ややかな視線で刺すような冷たい空気がそこにはあった

_____  1分前  ____________

ヘリに乗り込んだ俺は安穏のため息をついた
今このヘリにいるのは操縦している誰かと、先ほどの男
3人は生還の喜びを分かち合う事無く無言でたたずんでいた
「助けてくれてありがとう、所ででそろそろあんた達が誰なのか教えてくれないか?」
俺が声を上げた事に驚いたのか、男はこちらを見つめていた
「俺達は政府直属の工作部隊に所属している、今回のミッションはあの研究所の資料奪回と君の救助」
俺の救助・・・何故おれを? ただの人質ということではないだろう、あの老人も俺に何かを聞くとか言って・・・

それは突然の出来事、何かがヘリに当たったかと思うと爆風が全てを包んだ・・・
一瞬の事で、何がなんなのかわからずに混乱した
なぜ、静かなんだ・・? なぜ、物体が空中で静止しているんだ・・?
何が起こったのかはわからない、でもそんな事を気にしている暇は無い
俺はヘリを男とその相棒を抱え4、5メートルほど離れた地面に飛び降りた
そして着地と同時にヘリから離れる、
数秒後、再び時は動き出し先ほどまで自分達が乗っていたものは見るも無残な姿になった

2人を寝かせて考える
さてと、冷静に周りを見てみよう、今は夜、ここの地形は森である事からしてここの近くにある開けた土地からヘリに対しての攻撃があった
2人の男は先の攻撃により負傷した、ここから動かすのは専決ではない
かといって、助けが来る確立は天文学的な低さと言える
さっきの奴等が何処まで追ってきているかも気になる所だが・・・
とりあえず、2人を抱えてでもどこか安全な場所に隠れるのがベストだろう
「よいしょっと」
一人で抱えるには少し重過ぎる、 無理もない大の男2人となると相当な重さがある
それでも今は緊急時だ、少しくらい我慢しなくては と自分に言い聞かせて森の中を歩く
10分後
とりあえず、ヘリの残骸から遠ざかる事には成功した
さすがに体力的にきつい・・ 休憩を取る事にしよう
「はあ、疲れた・・・」

不意にため息がこぼれる、空を見上げると三日月と星があたりを照らしていた
こんな状況でもなければ情緒にひたれたのに・・・
「んっ・・ ここは・・?」
「気が付いた? ヘリが誰かに追撃されて墜落したんだよ」
「そうか・・よく・たすかったな・・」

男は立ち上がろうとしているが体がいう事を聞かないらしい
男をなだめて、また寝かせる
「まあ、神様が味方してくれたのかもな」
「神なんぞ・・信じていたら・・戦争には・・いけないがな・・」

そういうとまた、男はまた瞼を閉じた
まったく幸せなものである
素人をひとり残して眠りこけるなどプロとしての自覚はあるのか?と小1時間、問いただしたい
このメタルギ○ソッリドを思い立たせるような状況にもほとほと飽きている所だ
そして睡魔が襲い掛かる・・・
と、思いきや半分眠っていた脳はしっかりと何かが近づいてくる事を察知した
ガサガサと誰かが歩く音がはっきりと聞こえる
やばい、やばい、やばい、やばい、”やばい”
半ばパニックになっていたと思う
当たり前だ今見つかれば対抗する術はない
けが人2人に小僧が一人、銃で武装した相手に勝てるわけもない
「くそっ!、いったいどすれば・・・」
「何もしなければいいさ」

後ろから声がしたのと同時に頭の後ろに何かが構えられているのがわかった
「まったく手間をかけさせおって、だがもう終わりだ おとなしくついてきてもらおう」

パーン

乾いた銃声がひとつ聞こえた、それは柔らかい肉を貫き死を与えた

バタリっ、と男が倒れる

そこには寝ている男たちと同じ特殊部隊風の服を着た男たちが4、5人機関銃をもって立っていた
「遅くなってすまない、君達を保護しにきた 安心して良い 私は彼等の仲間だ」
眠りこける男を指差しながら言った
とりあえず、安全は約束されたようだ

だが、その思いを遮るかの様にちかくで爆発が起こった
「なんだ? おい、他の部隊へ連絡を取れ」
前の男が後ろの男に命令するが、どうやら連絡がとれないようだ
「とりあえず、落ち合う予定になっているA4ブロックへ急ぐぞ」
2人の男たちは仲間の肩を借りてどうにか歩いていった

そして少しばかり歩くと:開けた場所:が出てきた
「何だこれは?!」
驚くのも無理はない、そこには誰一人いなかった
正確には全員<消された>のだ
地面に人体のパーツと大量の血が飛び散っている、さらに焦げた跡と匂いもある
まるで何か激しい<爆発>でもあったように・・・

一人の勇敢な男が遺体を確かめに行こうとした
フラッシュバックとでも言おうか
俺はあの天道虫を思い出してしまった
とおとい命がまたひとつ吹き飛んだ
いきなりの爆発は彼の真下で起こった
下半身が吹き飛ばされ、上半身もぼろぼろになった遺体がひとつそこにはあった
「うわああああああぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
俺はパニックになり再び森のほうへ走り出した

後方ではさらに爆音が聞こえる
だが、それは恐怖を駆り立てるだけでしかなかった
「はあ、はあ」
息が完全に上がってしまった、だが逆に頭のほうはすこしだけ落ちついた
我ながら情けない、爆発でパニックになりひとり逃げ出してきてしまったなんて

「お仲間を見捨てていくのは感心しないなあ〜」
上のほうから発せられたその言葉は皮肉な笑みを含んでいた
「おまえはっ・・」
そう、あの男である 俺の日常をぶち壊した 黒い瞳の男

「さあて、ゲームは終わりだ 僕は君を処分する役目を賜った、使えない道具はいらないそうだよ
<喪坂クン、君の噂は聞いているよ。彼等が作った最高傑作であり欠陥品、僕がこの世から完全に消去してあげよう>」

そして、俺は絶体絶命の戦いを強いられることになる・・・

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