ほろ酔い(12停止目)
「長いようで短かったなぁ・・・。」
俺の親友が呟く。
「あぁ・・・そうだな。」
俺の生返事。
「聞いてんのかよ!お前!まったく。そんなんだから今日まで告白のひとつもできねえんだよ。」
俺の名前は喪理雄。高3だ。
今日は高校の卒業式、といってももう式は終わった。
今はみな思い思いの表情をして教室でしゃべっている。
別れを悲しむやつ、楽しそうにしているやつ。
俺は・・・俺はずっと外を見つめていた。いや、あの子の顔を思い浮かべていたのかもしれない。
入学当初から抱いていた淡い恋心・・・それは果たされることなく終わりを迎えようとしていた。
時計の秒針が動く。また外を見る。小さなため息。また時計をみる。
「なに?お前今日あいつに告白すんの?ずっと好きでした!毎日君で抜いてました!ってw」
「うるせぇ。しね」
「やだやだ、恐いよー。俺そろそろ帰るけど、お前どうすんの?」
「あー?もうちょいいるわ。この席からみる景色も見納めだしな」
「ロマンチストテラキモス・・・。まぁいいや、じゃーな!!」
「おう。じゃーな」
ふぅ・・・とひとつため息をつく。
「結局このまま終わりか・・・。」時計の針の音だけが響く教室でうわごとのように呟く。
さぁて、帰るかねぇ・・・。
と席を立とうとした瞬間、
突然勢いよく教室のドアが開く。固まる俺。
時計の音だけが頭の中に響く。何をしゃべったか覚えてない。
「じゃーねー。私忘れ物取りに来ただけだし!」
「あ、あ、うん。」
いやだ、いやだ、もう少し時間をくれ!今しかないんだ。もう少しだけ・・・。
頭の中から時計の音が消える。彼女の動きも止まる。
「・・・入学したときから、ずっとずっと好きでした。」
静寂から時計の音だけが響く教室へと戻る。
彼女も動き出す。
最後に彼女は一言だけ呟いた。
「ありがとう・・・さようなら。」
僕は何もゆわずに頬をぬぐう。
「卒業式だし、泣いてもいいよな・・・。」