AAAその2(11停止目)

 

様々な領域(エリア)が存在し人間と機械と妖魔が混在する世界。

この世界はエリアと呼ばれる領域が混沌の中に浮いている。

そしてこの世界には印術、秘術、空術、時術、妖術、魔術が存在している。


俺の名前はジャック。エリア相互警邏機関IAPOの隊員だ
。俺はこう見えても時術を少しばかりかじっていて、時間を数十秒ほど止める事ができる術(タイムスリープ)を覚えている
他にも鍛錬を積めば強力な術が使えるそうなんだが俺は飽きっぽい性格でね。
俺は今、遺跡と王宮が点在しているアウランというエリアに来ている。
ちなみに俺を含め三人の仲間がいる、一人は角刈りでハチマキをまいている飲んべえのギン、だがかなり腕のたつ剣各らしい。
俺にはどうみてもただの飲んべえにしか見えないがな。
もう一人は人間ではなくて機械のA87、こいつは動いているのが不思議なくらい型の古いロボットでこいつのコア自体は大昔の大戦の時に作られたものでそれが巡り巡って今のボディに収まったらしい。
しかも機械のくせに記憶喪失という始末だ。
なぜ俺がこんな遺跡のエリアに来ているのかというと遺跡の盗掘者が跡を絶たないからだ。

俺が遺跡のパトロールを終えたところであの二人に会ったわけだ。
「ところであんたらはここに何をしに来たんだ?まさか盗掘か?」
「まっさかぁ、そんな訳ねーよ、なぁA87?」
「その通りです」
「じゃ、何しに来たんだ?こんな遺跡しかないエリアに」
「ちょいとこいつの記憶を取り戻すためにね。ここの遺跡に古代のシップの残骸があるだろう?」
「そんな所あったか?」
「あるある、なんならアンタもついてくるかい?旅は道連れってね」
シップというのはエリア同士を繋いでいる唯一の交通手段で、飛行機や船みたいなものだ。

そんな訳で俺はこの二人についていく事にした、
しばらく歩いていると生い茂った木の向こうになにやらデかいものが見えてきた


「これがあんたらが言っていた古代のシップの残骸か……デカいな。」

それはここから見ても全体が分からないくらい巨大なシップの残骸だった。
「内部からエネルギー反応を確認」
「よし、さっそく入ってみるとするかぁ」
「お、おい!」
ギンとA87はさっさとシップの中に入っていってしまった。
「チッ、しょうがねぇな。これもパトロールだ」

シップの内部は薄暗くあちこちに植物が生えている。あちこちに土砂がたまっていてこのシップがここに不時着してから相当な年月が経っていることが分かる。


「なかなか涼しいな!うはははは」
「あんたは気楽だな、こうゆう所にはモンスターなんかが巣くってるもんなんだがな。」
「前方に生体反応があります。」
「ほら言った通りだ。」

俺がそんな事を言い終らないうちにそいつは俺達の前に表れた。
コウモリを馬鹿デカくしたような奴、ソニックバットだ!俺は官給品のハンドブラスターを構えて撃った。

ソニックバットはひらりひらりとかわす。
タイムスリープを使うのもいいがあれを使うと死ぬほど眠くなるからな。
「くそっ!おい!あんたらもなんとかしてくれよ。」
「命令を復唱します。敵を殲滅せよ」

俺が後ろを振り返るとA87がバルカンを構えている。

ドガガガガガッ!


次の瞬間ソニックバットは文字通り蜂の巣になっていた。

「いやいや、すっげぇなぁ。」
ギンが笑っている
「あんたは腕のたつ剣客じゃなかったのかよ!」
「うはははは、能のあるサムラーイは爪をかくすのだ!」

「はいはい」


その後も無機質のモンスターなんかが現れたが俺のブラスターで消し炭にしてやった。

なかなか空かないドアを蹴破るとそこにだだっ広い空間があった。


「指令室だったようだな」
「奥からエネルギー反応を検出」
「よし行くぞ!」


A87のセンサーを頼りにエネルギー反応がある部屋にはいるとそこは壁に埋め込まれた情報端末がある部屋だった。
端末のランプが明滅している、どうやらここのシステムは本当に生きているようだ。

「さっそく情報を引き出してみようぜ」
「端末に接続します」


A87が端末から引き出している途中でエネルギーが切れてしまったようで得られた情報が半端になってしまったが幾つかの貴重な情報を得られた。

A87のコアは太古の大戦の時代に製造されたものでこのシップも同じ時代に建造されたものらしい。
そしてその時代の指令部はまだ存在している。
ということは現在のエリア統括組織ソサイティの管轄下になっているはずだ。
これは俺も初めて聞いたことだ、多分ソサイティの最高機密なんだろう。

それともう一つ情報が手に入った、それはA87の任務についてだった。

太古の大戦でのA87の任務は敵の最終兵器の破壊。
しかし、その最終兵器が破壊されたという情報はなかった。

「まさかまだ大昔の兵器が残ってるってのか?」
「ここにその大昔のコアが入ったロボットがいるじゃねーか、うははは」


酔っ払いにもっともな事を言われてしまった、俺もヤキがまわったな。

しかし古代の兵器がまだ存在しているとすればとんでもない事になるな。
俺はしばらくこの二人について行くことにした。

古代のシップの残骸の内部を一通り探索した俺達はその後、アウランのシップ発着場に向かった。

アウランからクリーブ行きのシップに俺たちは乗った。今、俺達がいるクリーブというエリアは交通の要所でもあるが一度裏路地に入ると強盗や薬、武器の密売が横行している治安が悪いエリアでもある。


「ウィ〜、ヒック。これからどうすんだぁ?」
ギンはアウランからここに来るシップの中で安酒をたらふく飲んでいた。
「A87の記憶が戻らないとどうしようもないからなぁ、たしか両替屋の脇に電子ネットに繋がる情報端末があるから情報を集めないか?」

端末には様々な情報が映し出されていた、その中で目に止まるものがいくつかあった。
ロボット工学の第一人者バロッティ氏、最近業績を上げてきている中島製作所・・


端末から情報を得た俺達はバロッティ氏に会うためにマンハッタン行きのシップに乗り込んだ。


エリア:マンハッタン  ここはエリア統括組織ソサイティの表玄関にあたる、周りを海に囲まれた大都市だ。

俺達は今、ソサイティのセントラルゲート前にいた。
「バロッティ博士はソサイティの研究施設にいるはず・・・通行許可証が必要だな。」
「IAPOの権限でなんとかなんねぇのか?」
ギンは長いドライブ中ですっかりアルコールが抜けたようだ。
「IAPOって言っても俺はただのパトロールだしな、無理だとおもうぜ」


チッ、しょうがねぇ。久しぶりだが…使うか
俺は時術タイムスリープを発動した、
いきなり冷水を頭からぶっかけられたような感覚に襲われ、急速に音が消えてい
った。
俺はゲートの脇にある詰め所に向かって走った、
「え〜っと、通行許可書はっと・・・・」
今はどれだけ効果が続くかは分からないが出来るだけ長く続いてもらわないと。
なかなか許可証が見つからない、もしかしてここには置いてないのか?
そうこうしている内に周りの風景が一瞬ブレた、そろそろ切れるな。
俺は手ぶらで元の位置に走って戻った。くそ!駄目だったか、あぁ頭が痛てぇ。
俺に合わないのかな?そう思っていた矢先いきなり音が聞こえ始めた、時間は通常通りに動いている。

結局、中に入る手段が思いつかなかったので俺達はとりあえず俺の行きつけのファーストフード店で腹ごしらえをすることにした。

「しっかしA87のボディってぼろいなぁ」
「お褒めの言葉有り難う御座いますジャック様」
「いやいや褒めてねーって」
「まったくその通りだ、うははは!」

笑いながら俺はさっきからこちらを見ていた男を気にしていた、なぜ俺がその男に気付いたかって?それは長年の勘ってやつだな。その男が立ってこちらに歩み寄ってきた。

「ちょっとゴメンね、君のボディは見たことがないなドコのメーカー?」
「これは私を見付けてくださった方のオリジナルです」
「ふーん、君、おもしろいなぁ。ちょっと僕の研究室に寄ってってくれないかな?」
「ちょっとちょっとアンタ、俺達はバロッティ氏に会うためにここに来てんだ。そんなに暇じゃないんだよ」
「あぁ、彼を捜してるんだ?なら会わせてあげるよ。だから僕の研究室に、ね?」
「それ本当か?じゃあ早速いこうぜ」
「了解しました」
「おいおいもう行くのか?」
「ギンさん早く行くぞ!」


ファーストフード店で会った男が俺達を連れて来たのは俺達がさっきまでいたソサイティの研究所施設だった。

「おいおいアンタ、ソサイティ関係者だったのか」
「ふふっ、まぁね」
「でっけービルだな」
明らかにここでは下駄をはいて腕まくりした肌着のギンの格好は浮いている、うぅ周りの視線が痛いぜ。


「さぁここが僕の研究室だ。おっと自己紹介がまだだったね僕の名前はバロッティ・エデューソン」
「あ、あんたがロボット工学の第一人者!?」
こいつには俺もビックリだ、見た感じまだ25、6の青年だ。ギンも目を丸くしている。

「それじゃ早速、君のボディの解析を始めようか。」


A87のボディの解析はしばらくかかった、どうやらバロッティが改造を施したようだ。
「よし!これでメモリーの方はだいぶまともになったと思うよ、でも君のコアを散々調べたけどあんまり分かんなかったなぁ。なんだか意味不明なプログラムもあったし、また暇があったら来てくれる?はい、これパスカード。」

俺達はバロッティに別れを告げた後、セントラルゲートを出て中島製作所があるエリア行きのシップに乗ろうとした時、俺の耳に触る電子音が鳴り響いた。
「おっと、本部からのコールだ。スマンが俺はここまでだ、必要になったらコール
してくれよな。」
俺はギンとA87に別れを告げた。


本部からのコールの内容はクリーブでジャンキー共の乱闘騒ぎの鎮圧の要請だった。
まったくパトロールの隊員が少なすぎるぜ。
俺は小言を言いながらもクリーブ行きのシップに乗った。




「おいおいおい、なんなんだこりゃ」
俺が乱闘が起きていた現場に駆け付けるとそこにはのびたジャンキー共が寝っこ
ろがっていた。
乱闘騒ぎを見ていた野次馬によると特撮ヒーローのような格好をした奴が瞬く間
に乱闘をしずめたのだという。
特撮ヒーロー?そんな変態趣味の奴がこいつらを……
俺は只の変態ではないことを直感的に察知した。
そんな奴がもっと増えたら俺達もちっとは仕事が楽になるんだがなぁ。
まったく何をしに来たか分からねぇよ
まぁ仕事もなくなったし今夜は久しぶりに一杯やるかな?

俺が一杯やりながらTVを見ていると臨時ニュースがはいった、
「今日の夕方セントラルゲートで爆破テロがあった模様です、現在セントラルゲートは・・・・」
ふ〜ん、テロねぇ。
「・・・死亡したのはロボット工学の第一人者であるバロッティ氏をはじめ・・・」
俺はすっかり出来上がっていて判断能力が落ちていたが、これだけは理解できた。

バロッティが死んだ。




「うぅ、あ、頭が痛てぇ。」
昨日、飲みすぎて二日酔いになった頭にコール音が響く。

「あっ!ジャックかい?バロッティだけど今からマンハッタンに来てほしいんだ
。君の力が必要になった。」

俺の事を必要にしているのならすぐに馳参じるのが俺の信条なんだが
この頭の痛みはどうしようもない。俺はドリンク漬けになってやっと動けるようになった。
よし待ってろよ。

えっ?バロッティ?あいつは死んだはずじゃ。とにかく俺は重たい頭を支えながらマンハッタン行きのシップに乗った。



マンハッタンに着いた俺はギンとA87とバロッティ達と合流した。バロッティはロボットになっていた。
もっとも人間の方のバロッティは先日の爆破テロで死んでしまったが、自分の人格をロボットにバックアップしていたようだ。

「ジャック、君は時術を扱えるんだってね?」
「まぁ、多少な」
「特定の対象の時間を止める事は可能かな?」
「あぁ、できる」
「よし!決まりだ、これから古代の遺産。最終兵器を破壊しに行くのに君も同行
してもらう。」


かくして俺は大昔に建造された兵器の破壊を手伝わされる事になった。
俺は今、バロッティがチャーターしたシップに乗って最終兵器に向かっていた。


「お、おい!あれか?」
「どうやらそうみたいだね。」

俺達の目の前に現れた最終兵器は俺の想像を遥かに絶するものだった。
このシップなんか米ツブくらいの大きさになってしまうほど巨大な物だった。
俺達は適当な隙間を探して内部へ潜入した。
内部は機械だらけだったがメカバロッティやA87のウィルスなんかでお互いに
戦い始めた。
「なんだ、結構あっさりいけるんじゃないか?」
「それはどうかな?前を見てみなよ。」
俺達の前方の通路の上には小さな筒状のものがいくつもついている兵器が鎮座し
ていた。
「なんだあれ?」
「高出力圧縮レーザー連装砲と確認」
「そう、多分あそこを通ろうものならレーザーの雨あられだろうね」
バロッティはいつもの口調で話す。
「じゃあ、どうするんだ?」
ギンが口を挟む。
「ん〜、恐らくこの連装砲の解除パネルが向こう側にあると思うんだ……」
バロッティが言おうとしているのは察しがついた。
「俺が行きゃあいいんだろ?」
「そう!よろしく頼むよ!」

ふぅ、二日酔いの頭でこんなとこに連れてこられて時間を止めてレーザー砲の下
をくぐらせられるとは思いもしなかったぜ。
さすがの俺もレーザー砲の下をくぐる時はまた時間が動きだしやしないかとびび
っちまったよ。
レーザー砲をくぐってしばらく歩いた先にあった部屋にパネルがあった。
大昔の人間が作ったものだからよく分からんが多分こうすりゃいいんじゃないか
な?
人間の考えてる事なんて変わりゃしないさ。
俺はレーザー砲のグラフィックが写っているパネルを軽く叩くと×マークが表示された。
レーザー砲の近くまで戻るとすでにあいつらがくぐっていた。
レーザー砲のコントロールパネルがあった部屋辺りから暫く進むと円形のステー
ジがあり行き止まりだった。
俺があたりを見回していると…
「上だ!」
ギンが大声を上げた。俺はとッさにハンドブラスター抜いて落ちてくる球体にむ
かって撃った。
球体には直撃したがそれほど損傷を負ったようには見えなかった。
その球体は俺達の目の前で変形していき球体からロボットの上半身の骨格が出た
ような形で変形を終えた。

「機械神バロールと確認」
バロール?ケルト神話にそんなやつがいたような気がするな。
たしかその目を見たものは死ぬとか。
たしかに機械神バロールの球体の部分は眼球の様にみえる。
「気を付けて、手強いよ。」
「久しぶりに血が騒ぐな。」


まずは俺がバロールの細い腕に集中砲火を浴びせる。まずは右腕だ!
そこをギンが斬りつける。鋼鉄製の腕が瞬く間にボロボロになっていく
バロールはここで反撃に転じた。
奴の目が光ったかと思うとなんだか嫌な音がし始めた。
人間の俺には対した影響はなかったが電子機器であるブラスターがいかれている
事に気付いた。
磁気か……ヤバイッ!A87とメカバロッティの方を振り返ると少しキグシャク
していたが大丈夫そうだった。
このまま長引くと危ないかもな。
そう思った俺はバロールに向かって駆け出した。
バロールは鋭い爪で俺をなぎ払おうとしたがA87の連装ミサイルによって派手
に爆発した。
もうもうと煙が上がる中でまだ動いているバロールの下についている球体に触れ
た俺は奴の時間を止めた。
「今だ!全弾ぶっぱなせ!」
俺が言い終わらない内にバロールをロケット弾やミサイル、レーザー、銃弾の雨
あらしが襲った。俺はというと流れ弾を喰らわないように全速力でバロールから離れた。
次の瞬間、大爆発の爆炎とともにバロールは消滅していた。



俺達はバロールの残骸を寄せて先ほどの円形のステージの所にあった端末を見つ
けた。
どうやらこれが最終兵器に直接アクセスできる唯一の端末らしい。

「さぁ、どうするんだ?」
「まず、ジャック。君には端末の時間を止めて、そしてその内ににウィル
スを送り込んで欲しいんだ。このウィルスはA87に組み込まれてい
たもので最終兵器専用の強力ウィルスさ。君がウィルスを送ったら時間の止まっ
ている最終兵器のメインフレームを破壊するって訳さ。」
「成程、理屈は分かったが本当にうまくいくのか?」
「大丈夫さ。」

まぁ、ロボット工学の天才が言うんだから間違いはないだろう。
しかし、時術をこれだけ使ったのも初めてで俺の体はボロボロだった。
でも、やるしかない。俺は端末に触れ時間を止める。そしてウィルスを送り込む
……


俺の意識はここで途絶えた。



俺が意識を取り戻したのはシップの中だった、どうやら最終兵器の内部から俺を背負って脱出してくれたみたいだった。

「ど、どうなったんだ?」
クソッ、頭が痛い。
「おっ!気がついたか?」
ギンが振り向いた。
「やぁ、大丈夫かい?」
「どうなったんだ?最終兵器は?」
「見てごらんよ、そろそろだと思うよ」
俺は頭を押さえて立ち上がった、外には混沌の中にはまだ最終兵器が浮かんでいる。
「失敗したのか?」
俺がバロッティに聞いた時だった。

カッ!

目に突き刺さるような閃光が走ったかと思ったら最終兵器は次第に崩れ始めた。
そして混沌の中に沈んだ・・・

最終兵器と呼ばれたもののあっけない最後だった。
「任務の遂行を確認」

A87が呟いた。




さーて、俺は家に帰るとするかな?と、その時電子音が鳴り響いた本部からのコールだ。「ジャック!貴様ぁ、今どこにいる?さっきからずっとコールしてんだぞ!」
おぉ、恐っ!なんかしらんが俺の上司がおかんむりだ。
まったくIAPOは古代の超兵器を破壊したヒーローに休みもくれないのか?

〜後日談〜

今日も俺はパトロールをしている、平和なのもいいがなんか起きないもんかねぇ。
暇で暇でたまらん、
あの後、A87は自分を掘り出してくれた人間の元に帰り、ギンは今でもどこかを千鳥足で歩いてんじゃないかな?
バロッティはというとロボットになってからも人間の時と同じように研究に没頭しているらしい。
俺か?俺はいつもどうりさ。

じゃ、またな!

〜完〜

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