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これわウンコ山の変態じじぃの家にて無理やり聞かされた昔話ッスよ

 

むかーしむかし。ある村に、二十九にして童貞の男がおったそうな。
『喪喪太郎』という名のこの男、かなり悲惨な人生で、
やれ村を歩けば「顔がたいそう気味が悪い」という理由に石を投げられ、
やれ村の女と目が合えば「ふらちな輩」と罵倒を浴びせられ、
時には無実の罪にて檻の中へ入れられることもあったのじゃ。
そんなもんだから、一人村の端に小屋を建て、そこに何ヶ月も何ヶ月も
引きこもってしまったのじゃ。

そんなある日、村の守り神である『時刻みの神』の像の首が、
なんと、人知れず切られいずこかへと消えてしまってるではないか。
それを知った村の長は、
  「なんというバチ当たりな盗人め、わしの自慢の極太火縄銃で尻の穴を裏返してやるわ!」
とたいそう腹を立てたのじゃ。するとそれを聞いた村一番の美男子が
  「ならば拙者とその仲間でひっとらえてみせましょう」
と意気揚々と答え、美男子とその仲間で犯人探しがはじまったのじゃった。

しかし、いくどもいくども調べてみても、誰が犯人だかわからない。
しまいに諦めかけた美男子は、村の端に住む『喪喪太郎』に目をつけたのじゃ。
  「きっと自分の顔が気味が悪いから、像の綺麗な顔立ちに嫉妬して切り取ってしまったんだ。」
そう決め付け、仲間と相談して『喪喪太郎』を犯人にしようと決めたのじゃ。

その日の夜、喪喪太郎は犯人として捕まり、尻の穴を拡張される夢を見たのじゃった。
恐ろしさのあまり飛び起きた喪喪太郎は大慌て。
  「なんてこった。このままでは尻の穴が耕されてしまうだよ!あぁ恐ろしや恐ろしや。」
神も仏もない。そう思った喪喪太郎は、夜のうちに荷物をまとめ、村から逃げ出したのじゃ。

逃げ出した喪喪太郎は山を上り、そのまた下り、また山を登って、
いちばーん高い山を見つけ、そのてっぺんに住むことにしたのじゃ。
ひとりで生活するのはたいそう困難なことであったが、
ずっとひとりで生きてきた喪喪太郎。
木を切り小屋を立て、ひとりで畑を耕し、孤独じゃが幸せな生活をおくったのじゃ。

そして一年がすぎ、喪喪太郎もついに童貞のまま三十になった。
その日はたいそう贅沢に、芋とたくあんと川魚、それに苦労して育てた米を
皿に盛り付け、一人寂しく三十の祝いを始めたのじゃった。
 「神も仏もない。おらにはおらしかおらぬ。おらが三十まで生きれたのもおらのおかげ。
  おらに感謝だぁ。いただきますだぁ。」
そういいながら、一気に飯に食らいついた。あまりのうまさに無我夢中でむさぼり、
腹いっぱい食べた喪喪太郎は、満腹のあまりすっかり眠りこけてしまったのじゃ。

そしてすっかりお月様が空に輝き、草木も眠るころ。喪喪太郎の小屋の戸を、
・・・・とんとん・・・・とんとん・・・と叩く音がするではないか。
喪喪太郎はびくりとして飛び起き、
 「さ・・・さては村の連中がおらを捕まえにきたんだな。
  か・・・返り討ちにしてくれるだ!」
がたがたぶるぶる震えながら、なべの蓋としゃもじを持ち身構えて、
戸口にむかって怒鳴ったのじゃ。
 「誰だ!おらに知り合いなどいないだ!帰れ!」
すると、すすり泣く女の声が聞こえ、
 「神様だぁ〜・・・あけとくれぇ・・・あけとくれよぅ・・・」
なんと、その女は自分が神様だと言うではないか。
自分をからかっているのだろうと、喪喪太郎はカンカンに顔を真っ赤にさせ、
 「おらは神も仏もいらんだ!帰れ!帰れ!」
と怒鳴り散らしたのじゃ。戸口のむこうの女はしくしく泣き出して、
 「おらみたいな神様はだめかぁ〜・・・何もできない神様だけんなぁ〜・・・
  おらはだめな神様だぁ〜・・・」

仕舞いには、ぉーいぉーいと大声で泣き出し、戸に拳を打ちつけ、
ごろごろごろ地面をのた打ち回る音が、戸口の外から聞こえてきたのじゃ。
どこぞの基地外か、一発ぶん殴って追い払ってしまおうと、
喪喪太郎は戸を開けるなり、しゃもじを振りかぶって女の頭に殴りつけたのじゃ。
ところがどっこい!しゃもじは空を切り、喪喪太郎はうっかり倒れこんでしまった。
恐る恐る顔をあげると、なんと、首から上のない着物姿の貧乳の女がずーんと
立っているではないか。すっかり腰を抜かした喪喪太郎は、両手を合わせぶるぶる振るえ、
 「なんまんだぶ。なんまんだぶ。どうか成仏してくだせぇ。
  おら、何も悪いことしてないだぁ。」
とお祈りをささげたのじゃ。すると首なし女は、
 「おらぁ幽霊じゃないだぁ〜・・・神様だぁ〜・・・鬱だぁ〜・・・」
と泣きながら、すたすたと小屋の中に入ってきてしもうた。
喪喪太郎は怖くなったが、追い出すわけにもいかず、仕方なく迎え入れたのじゃ。

 「そ・・・そんでぇ・・・神様がおらになんの用だぁ?」
なんとか泣き止んだ首なし女と向かい合わせに座って、喪喪太郎は恐る恐る聞いてみた。
首なし女は首の切れ目あたりから声を発し、こう言ったのじゃ。
 「おら、時刻みの神だぁ。頭を取られてしもうて、なんとか取り返そうにも、
  頭がないからいい考えが浮かばないんだぁ。んだから、助けを求めてフラフラしてたら、
  うっかり道に迷ってしまっただぁ・・・。なぁ・・・助けとくれぇ・・・助けとくれよぅ・・・。」 
首なし女が喋るたびに、首の切断面がちらちらと見え、思わず気持ち悪くなったのじゃが、
吐き気を抑え、喪喪太郎は答えたのじゃ。
 「そげな虫のいい話ないだぁ。女神さんはおらをちっとも助けてくれなかっただ。
  おらに女神様を助ける義理はないだ!自分でなんとかするだよ!」
ふんっと鼻をならし、腕を組みながら、喪喪太郎は背を向けた。
すると、首なし女はわんわん泣き出して、喪喪太郎にすがりついてこう言ったのじゃ。
 「おらぁ、がんばっただよぅ!でも、おぬしが不運すぎて、なんとか死なない程度に
  保つ事しか出来なかっただよぅ。おら精一杯がんばっただよぅ!」
切断面が目の前でぐちゅぐちゅとたいそう気味悪く動いていたので、
喪喪太郎は、わかった、わかった、助けようと、女神の願いを聞き入れてしまったのじゃ。
 
 「そんでぇ。おらはどうすればいいだ?」
喪喪太郎が問うと、首なし女神は懐から三枚の札を取り出しこう言ったのじゃ。
 「首を取ったのは、村一番の美男子の、妾だぁ。
  おらの額についてる宝石が欲しくて、首ごと切り取っていったんだぁ。」
ふんふん、それで?と喪喪太郎は頷く。
 「そんだで、この三枚の札をやるから、取り返してほしいだぁ。
  この札は、額に付けてのりが弱くなるまでの間、時を止めることができる
  ありがたーぃ札なんだぁ。これがあればすぐに取り返せるだぁよ。」
おめぇ、それがあってなぜ自分で取り返さないのか、と問うたのじゃが、
額がないから無理だと言われ、あいや合点。承知の助。
喪喪太郎は札を受け取ると、えっちらおっちら山を越え、村へと向かったのじゃ。

村につく頃にはお天と様が上り、すっかり朝になってしもうた。

喪喪太郎は顔を隠し、こっそり、こっそり村にはいったのじゃが、
あいやうっかり運悪く、遊んでいた悪餓鬼どもにさっそく見つかってしまったのじゃ。
 「やーぃ やーぃ 喪喪太郎!ひょうたん顔の喪喪太郎!顔を隠しても無駄太郎!
  女神の頭の盗人喪喪太郎!村長の火縄銃で悶絶死!仏様も救わない!」
大声で餓鬼どもが歌うもんじゃから、村はガヤガヤ大騒ぎ。
喪喪太郎と聞いて、村の人々は一斉に家から顔を出し、どこだどこだと探し始めたのじゃ。
大慌てで喪喪太郎。懐から札を取り出し額にピタリとくっ付けた。
すると、なんと奇怪。餓鬼どもの歌がとまり、風も止まって、喪喪太郎以外の
誰一人として動かなくなってしまったのじゃ。
「こいつぁすげぇだ!悪餓鬼ども、これでも食らえ!」
喪喪太郎は、道端に落ちていた馬糞を拾うと、ひょぃひょぃと餓鬼どもの口の中へ
投げ入れた。餓鬼ども全員に糞を投げ入れたところで、ひょろりと札が取れ風も村人も元通り。  
糞を食った餓鬼どもは、うーんうーんとのた打ち回り、ゲロと吐血を撒き散らしながら、
全身痙攣を起こし、ついに呼吸困難で死に絶えてしまったのじゃ。

餓鬼どもが死んですっかり上機嫌になった喪喪太郎じゃったが、
村人は大騒ぎ。どこだどこだと手に桑、鎌をもって家から飛び出してきたんじゃ。
慌てて逃げる喪喪太郎。じゃが多勢に無勢。すっかり取り囲まれてしまったのじゃ。

村人の輪の中から、村一番の美男子が躍り出て、喪喪太郎の首に
これまたたいそう美しい刀を突きつけて、こう言い放ったのじゃ。
「ざまぁねぇな。喪喪太郎。ここで今、拙者がおぬしの首を切り落としてもいいが、
  村の長がおぬしの尻の穴をご所望だ。動くなよ。」
すると、村人の群れの奥からぐいっと、いまにも暴発しそうな、
巨大な火縄銃をギンギンとさせて村の長が現れたのじゃ。
「喪喪太郎。村の掟じゃ。盗人は尻の穴を裏返す罰を与える。」
万事休す。喪喪太郎は懐から二枚目の札を取り出し、額にピタリとくっ付けた。
すると、これまた奇怪。美男子も村の長も、刀と火縄銃を突きつけたまま、
動かなくなってしまったのじゃ。喪喪太郎は、戦意高揚!       
「村長はおめぇの、綺麗な尻に挿入れたいんだとよ!」
喪喪太郎は美男子の尻をめくり、村長の極太火縄銃を差し込んでやったのじゃ。
挿入れたところで、ひょろりと札が取れ、美男子も村長も元通り。
美男子は苦痛と屈辱で顔を歪め、ひぎぃ!と一言叫ぶと、泡を吹いて逝ってしもうた。
村長は恍惚の表情を浮かべ、「これじゃ!これじゃ!」と嬉しそうな声で叫んだのじゃ。
村人はその悲惨な光景に目を奪われた。このスキを逃さず喪喪太郎。
村人をかき分け、美男子の家へと大急ぎで向かったのじゃ。

美男子の家にたどり着いた喪喪太郎。柵を越え家の中へ。
戸を除いてみると、これまた美しい女が女神の頭を持ち、
額の宝石を外そうと必死になっているではないか。
 「まてぃ!そげな、バチ当たりな事をしてタダではすまんだよ!」
喪喪太郎は美男子の妾に怒鳴りつけ、家へと躍り出た。
妾は喪喪太郎を見るなり、
「貴様のような気味の悪い顔をした醜いものにはわからんのじゃ!
  この宝石は、こんな像より、わらわに似合うのじゃ!」
と、罵倒をあびせ、汚いものを見る目で睨みつけてきのじゃ。
喪喪太郎は、怒ることもせず、ただ呆れた顔で妾を見た。
必死に宝石をとりだすその顔は、なんとも醜いものか!
「いまの あんたが いちばん みにくいぜ!」
拳を振り上げ、像の頭を取り返そうと喪喪太郎は妾に飛び掛った。
じゃが、妾は刀を抜き放ち、憤怒の顔で喪喪太郎を睨みつける。
「豚め!豚め豚め!わらわが醜いとな!死んで償うのじゃ!」
妾は、刀を振り下ろした。それと同時に喪喪太郎、額に札をピタリ!
動きの止まった妾の刀を奪い、首を一閃!!!!
妾の頭がゴツン!と床に叩きつけられると同時に、ひょろりと札が外れ落ちた。
   

こうして喪喪太郎は、女神の頭を取り返し、家へと帰っていったのじゃ。
ごはんつぶで、なんとか首なし女神に頭を備え付けると、なんと元通り!
おでこに宝石、のほほんとした目の、ドジッ子貧乳着物二次元少女になったではないか。
それからというもの、喪喪太郎は、この時々首が外れてしまう女神と、
末永く、のんびりとくらしましたとさ。      
 「おらぁ、頭がもとに戻って、幸せだぁ・・・v」
 「首だけ後ろを向いとるだよ。」                    
                           
                           おわり。

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