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タイムノート

 俺は高校三年生である時東三十朗。成績も悪く進路はFランを眺めるばかり。顔も不細工ととっくに自覚してる。
そんななんの面白みのない俺に神様がプレゼントをくれた。

 タイムノート

1ページ目

 終業のチャイムが学校中に鳴り響く。先生の挨拶と同時にみんなぞろぞろと教室を後にする。
俺は彼女はもちろん友人もいない。授業が終われば一目散に帰宅するのみ。
母親はそんな俺にすぐ帰ってこないでたまには夜遅くなってもいいから遊んできなさいと言ってくれるが無理な話である。
「時東!ちょっといいか?」
俺ははやく帰ってテレビゲームをしたいのだが担任に呼び止められた。
 「おまえ願書は?」
願書・・・しまった忘れてた。面倒だがここは素直に謝ろう。
 「すみません。忘れてました」
 「おまえそんなんだから友達もできないし勉強もできないんだぞ。母親も何考えてんだが」
それとこれとなんの関係があるんだよ・・・
 「なんだその顔は!なにか言いたいならはっきり言え!」
 「い、いえ・・・」
自分のことは何言われようがかまないが母親のことは話が別だ。胸糞悪いな。とりあえず適当に相槌打って俺はこの場を後にした。

 帰り道はクラスメイトに見つからないように帰るのが俺のジャスティスであった。知り合い程度の奴と帰り道が一緒になる気まずさだけは避けたい。
俺は全神経を駆使し辺りを警戒しながら帰る・・・そんな中ふと何かが目に入った。
 「ノート?」
俺は大学ノートを拾った。中には日付が書いてあるだけで日記らしい文章もない。しかもまだ新品に近い。
ちょうどノートが切れてたので俺は設け儲けと思いながらノートを鞄に入れ再び神経を集中させ家に向かった。
しかしこのノートが俺の人生を180度回転させるとは考えもしなかった・・・

2ページ目

 「ただいま」
 「おかえり、今日もはやいのね」
 「学校は終わったんだからいいだろ」
いつも通りの会話をすませ俺は自分の部屋へそそくさと入る。
 「さて・・・」
俺はテレビとゲーム機のスイッチを入れレースゲームをはじめる。

 3時間くらいが経ったころさすがに少し疲れた俺はテレビを消しベッドに横たわった。つまらない人生だ・・・天井を見ながらそう呟いた。
 「そういえば・・・」
俺は担任に言われた願書の存在を思い出した。鞄の中からペンケースを出そうとするが見つからない・・・そのとき道端で拾ったノートに目がいった。
 「結局持って帰ってきちゃったけど・・・」
俺はぱらぱらノートをめくる。そのときなにか文章らしきものがあった。それは最初のページである。拾ったときはなかったような気がしたが・・・
 「これは・・・時間を止めるノートです?」
それはこういうものであった。

 〜これは時間を止めるノートです〜

・日付と時間を書き込めば指定された日時から30秒だけあなた以外の全ての時間が停止します
・指定できる日時は30日間まで
・最後に書き込んだ日時から1時間経たないと次の効果は得られない
・もしルールを破ればおなたは時間のない世界に引きずり込まれます

 「うは、この手の遊びをしてる奴がまだいたとは。どれどれ試してみるか」
時計をみる。4時五分前か・・・ノートに‘‘10月1日 16時00分‘‘と書き込み俺は再びベッドに寝転んだ。

3ページ目

 「三十朗!三十朗!」
ん?俺いつの間に寝てしまったのか・・・
 「今行くよ母さん!」
もう6時か・・・今日の晩飯はなんだろうな。

 「やっと降りてきたわね。せっかく学校はやく終わったのにあんたずっとゲームしてたの?」
 「いや、半分ゲーム半分昼寝」
 「同じことじゃない」
母さんと他愛のない会話しながらハンバーグをたいらげる。明日は平常授業か・・・面倒臭いなもう。
 「あんた大学どうするの?」
 「あ〜〜適当には入れそうなとこ探すよ」
 「全く死んだ父さんになんて言ったらいいのか」
母さんの言うとおり俺は父さんに合わせる顔はない。でも父さんだってそんなに良い大学行ってないじゃないか。
 「ごちそうさま」
俺は部屋に戻った。

ジリリリリリリリリリリ
 「ん・・」
自分で言うのもなんだがちょっとエロい声を出しながらいつもの朝を迎える。
結局願書忘れて寝ちまったよ・・・まぁ授業中に書けばいいか。
今日はただ聞いてるだけで良い世界史があったしその時にやろう。
 「行ってきます」
 「あ〜〜いってらっしゃい〜〜」
洗濯中に母親に一言残し俺は学校へ向かう。いつもの景色、いつもの人々、つまらない・・・
俺は朝はなるべく早く出るようにしている。全てはクラスメイトと遭遇しないようにである。

ガララ
 「やっぱ誰もいないよな」
家から高校までは歩いて20分。おそらく学年一学校に近い場所に住んでいるだろう。
まだ8時前なので生徒はいない・・・いや・・・日直である星野さんの鞄がもうある。
俺は二人きりになって気まずいムードにならないよう屋上へ避難した。

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