722(44停止目)

 

そこはいつもと変わらぬ街並みで、皆も普通に生活をしていて、何もかも普通なのだがどうやら僕はその普通のレールから少しはみ出してしまったらしい。
僕の名前は喪 一(も はじめ) 17歳で高校に通っていた。
世の中、皆が大変だ、急げ、急げ、と騒がしく焦らされたこの人生、いいかげん暇がほしいと感じていた矢先、それは突然とやってきて僕を陥れた。
2007年3月20日、その日は僕にとって終わりの日になった。いや、終わりという表現はしたくない、正確に言えば僕にとって終わってほしい日になったのだ。
いつものように寝起きし、帰宅をし、そして寝る、朝、起きてみるとその日は進んではいない。2007年3月20日なのだ。
「あれ?今日って21日だよね?」 「何言ってるの今日は20日よ」 この母親との会話、何度と交わした気がする。
だんだんと同じ日を繰り返していくうちに自分以外、何かの機械のように思えてくる。
同じ会話、同じ動作、どいつもこいつも変わらない。まるでシュミレーションゲームかのように同じ行動をとってくる人間どもよ、いいかげんにしてくれ。
その中で収穫といえばクラスの連中が僕のことをどう思っていたかが大体見えてきたことである。
大半は僕のことを疎く思ってたらしく、つまりはみせかけの仲の人間が大多数ということだった。
その中でも僕のことを友人としてみてくれる春野 無花果(はるの いちじく) 秋葉 御芋(あきは おいも) といった人物もいた彼らは僕にとって友人であった。
この二人にだけ僕におこっている不可解な現象を話したのだが、その方面には全く興味がないらしく、やがて僕の認識から友人という類にははいらなくなった。
やがて、僕は学校へ行くのをやめた。たぶん年数にしてみたら1年(356日)くらいはたっているのではないか。

いつものようにおちる夕日が僕の目元に溢れる涙を照らす。
「はぁ、どうするか。何か楽しいことはないものか、この非情な現実には死ぬ他、手立てはないものか。」
などと独り言を公園のベンチに寝転がり呟く。

あたりは暗闇に染まり、月が見えた、大きな満月だ、それは夜であることを感じさせた。
最近では、家に帰る気力すら失い、ただ公園のベンチで目を瞑り、明日に近づくにつれ襲ってくる眠気に身を委ね、また繰り返す。
最初は眠気への抵抗を試みたがどうしても眠ってしまう。
それは自分の意思とは関係なく、突然と襲ってくるモノであってどうしようもないものといつのまにか認知していた。
つまり気付かされ、諦めさせられたのだ何かの運命であるかのように。
そして今日もまたその眠気が身体を支配し、瞼が目に被さり、深い眠りへと・・・・・
2007年3月20日、やはりこの日にきてしまったらしい、僕はいつのまにかいる自分の部屋から下へ降りて朝食を食べる。
一体何度目のフレンチトーストであろうか、それを口へいれ、まるで作業をしているかのように食す、その後はパジャマから私服へ着替え、学校へ行くふりをして外にでる。
あとはただ公園で過ごす、いつもと変わりない2007年3月20日の始まりであった。
この変わりない日々、退屈ではあるが行動を起こす気力は既に無い。
この現象に気付き始めた当初はいろいろと考えてみた、殺人、強姦、窃盗、etcの犯罪行為、しかし実際に行動をおこそうとすると足が震え、身が竦む。
―もしも、自分が何かした後にこの現象が終わってしまったら―という考えが脳裏に浮かび躊躇をしてしまうのだ。
結局は学校へ行くのをやめた後は公園で延々と同じ日々を過ごす日課になってしまった。
これだけの日々を過ごしながら未だに僕は罪歴の一つもつけていない。
本当に情けない自分の姿が2007年3月20日に延々と留まっているのだ。

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