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あなたは神様は信じますか?

あなたは神様を信じますか?
え?新興宗教みたいだって?いやいや、別にそんなに深い意味はないけど
ただこれを読んでいる皆に聞きたかっただけ。
俺の意見?
神様は確かに存在する。
コーランや聖書などは、神を一人にして完璧になることを欲した。
だから彼は、頭がおかしくなったんだろう。
それで誰も彼の言うことを聞かなくなった。
漫画からの抜粋だけど俺はこれが確信をついていると思う。
でも、だからこそ俺はバカ正直な神様が好きだ。


 長い間、家には帰ってなかったが ようやく家に帰ってみると
親父が死んでいた。
俺が家を出たのは、絵で食っていくと夢を見て家を飛び出した時だった。

 親父は時代錯誤といった感じのお堅い公務員で、
お前も後々には公務員になれよと口ずさんでいた。
俺はというとそんな親父の人生が嫌で芸術家に生きると
高校生のころに思ったが、俺に芸術の才能なんて全くなかった。
必死になって絵の勉強をした。でも、元デザイナーの母親に俺のスケッチを
見せるとお前は絵が下手なのは、小さい頃から変わらないなと言われた。

無謀なのは分かっていた。
それでも俺は絵を描き続けた。
諦められなかった。

高校3年 進路を決める時、絵で食っていくと言って飛び出した時の
親父の顔が忘れられない。
俺に対して親父は始めて激怒したと思う、
あれから8年が経った。
俺は就職先が見つかった。俺の絵に対する姿勢が良かったらしい
周りは芸大や専門学校卒の中、何もない俺が受かった
俺は本気で嬉しかった。
そしてそのとき、実家に電話した。
「やっと就職が決まったよ、母さん。今度親父の好きなブランデーを
もって行くよ。 はぁ、また大乱闘しないといけないのかなぁ・・・・・・。」
母親が電話越しに肩を震わしてるのが分かる。

俺は、親不孝者だな。
もっと連絡すべきだったなぁ。

泣きじゃくる声が聞こえてくる
「良かった、良かった。あんた、ちゃんと食べてる?
早く一度でもいいから顔見せてよね・・・。」
「うん。元気だよ。それと親父は、どうなのかな?」
俺はちょっと出て行ったときの事もあり、渋々聞いてみた

そうすると急に静かになり
「遅いよ・・・。もうお父さんね、いなくなっちゃった・・・。」

俺は唖然とした。

これまで近い人が死んだ経験はなかった。そんな俺にこのことは
あまりにも衝撃的で、俺は頭で理解する前に泣いた。
アパートのお隣さんに聞こえるくらい大きな声で泣いた。
それにつられて母親も電話越しに泣いていた・・・・・・。

 そして、今俺は西宮の実家に帰っている。
自分の家なのによそよそしくインターホンを鳴らし
母親に入ってと言われて、玄関に入った。
家の中は、出て行ったときとは違う雰囲気で
居心地の悪さを感じた。

 親父が写真の中で軽く笑っている。
俺は遅れた、お焼香を済ませ。
出て行ったとき、俺は未成年で酒なんて飲めなかったが
今はもう四捨五入したら30だ。
親父の好きだったブランデーを煽る。
「親父、ごめんな」俺は、これしか言えなかった。
親父の写真はさっきと変わらず笑みを浮かべていたが、
親父は、許してくれるんだろうか・・・・・・。

 夕飯の準備が出来たらしい。俺は久しぶりに実家で飯を食うことになり
あれからの昔話で会話に花が咲いた。
母親はずっと笑っていて楽しそうにみえた。
姉が、よく顔を出してくれるからそんなに寂しくないと言い張るが
俺の話を真剣に聞いているその姿を見るとやっぱり寂しいんだろうなと思った。

夕飯も食べ終えた俺は、昔俺の部屋だった部屋で寝ることにする。
部屋は昔とほとんど変わりなく、ほこり臭いということはなくて
母親が掃除をしてくれていたということが分かった。
ここだけ時間が止まっていたような。
そんな感じがした。

俺はここで不思議な体験をした。
久しぶりに夢を見たというのはそんなにおかしいことではないが
妙に生々しい夢だった。

俺はよく分からないが病院の面会者入り口の前に立っていた。
俺はなぜか親父を探さなきゃという気持ちに苛まれ。
親父を探していく

一階を探し回る。   ――いない。

二階を探し回る。   ――いない。

三階を探し回る。   ――いた。

俺はやっと見つけたという気持ちでドアを勢いよく開ける。
周りには母さんや姉さん、医者たちが立っていた。
俺のそんな様子に彼女らは全く気付かず。
というより俺という存在が、彼女らには見えてないかのような感じにみえた。
親父は虫の息という感じで 呼吸器を外され、もうホントの最期だった。
親父は、母さんや姉さんに色々としゃべりかけていき
二人は大声で泣いていた。

いきなり親父は俺を見つめて
「お前の人生だ。好きに生きろ。頑張れよ。」と言った
皆、親父が虚空を見つめて何をしゃべっているのだろうと不思議に
思っているようだった。
俺は泣きじゃくりながら親父に向けて
「ありがとう。      ごめんなさい・・・お父さん。」
親父は俺の言葉を聞いたかどうかは分からないが
そのまま笑顔で息を引き取っていった。

俺はそこで目を覚める。
まぶたが開かない。寝ながら涙を流していたからだろうか。
無理やり開けてみると周りはすっかり朝になっていた。
一階に下りて俺は、朝飯を作ってくれている母さんに聞いてみることにした。

「親父最期になんか言ってなかった?」
母さんは、手を休め真剣な眼差しになり
「"お前の人生だ。好きに生きろ。頑張れよ。"
って、当時はあなたに向かって言ったかどうかは、よく分からなかったけど
考えてみるとあなたにそう言ってたんだと思う。」

俺は、このときまた大泣きした。

ありがとう、神様。親の死に目に会わせてくれて。

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