237その3(42停止目)

 プロボウリンガー金田……五知川ボウリングジム道場に残る伝説。
かつて日本のボウリング界を激震させたという彼の存在にあやかろうと、
今日もハイエナのような瞳をぎらぎらんさせた悪魔がやってきた。
 ここで行われるボウリングは普通ルールとは違う、デスマッチだ。
デスマッチとはボウリンガー同士が殴りあい死んだ方が巻けという過酷さ。
 「へへへ、俺は道場破りだ」
 身長千六百ミリの大男が中身に砂の詰まったペットボトルを凶器のように振り

回していた。
 「止めないか! 危ないじゃないか!」 
 「誰だてめぇ!! シャォラコロスゾわれえええ」
 「伝説のプロボウリンガー金田の意志を告ぐもの・・・といっておこう」
 「しゃらくっせえ」
 道場破りがペットボトルを振りかざすやいなや、超能力で時間をとめてガード

キャンセル。意志を告ぐもののボウリンガーボールがガードした。かかっとダッ

シュして回り込むと再びガードキャンセルからのローキックが炸裂した。道場破

りの足は粉々に粉砕されてちぎれとび、ストライクゾーンへ吹き飛ぶとピンの隣

に直立した。
 「ボウリング道具を傷つけるとはボウリンガーの風上にも置けん奴だ、死ねと

は言わん。だが、悔いるがいい」
 「なんという強さ。逃げなければ確実に逮捕」

 告ぐ者のボウリングボールキックパンチが命中すると震度三の地震が起きた。

それほどだった。
 「ふん、告ぐ者よ! その程度でボウリングデスマッチルールを極めたつもり

か!?」
 「誰だ!!」
 「貴様に名乗る名など権川久という名しかない!俺は前年度の不知火ボウリン

グジムの非公式大会準優勝者だ!」
 「知るか!」
 「だろうな、ボーリングほどに一般人の興味を引かないスポーツはない。卓球

並みにモテないんだぜ!!」
 「何をしにきた!」
 「貴様にボウリングの真髄を見せてやる」
 「いいだろう、一回戦の競技はピンを使ったドミノ倒しだ!!」
 これは神経を使う上に地味で精神を削り取られた。途中でいろいろあったが勝

った。
 「ふふふ、どうやらボウリンガー四天王最弱の玄武を司る権川を倒したか。だ

が、俺達は三人で一人の三つ子だから一度の対戦で決着をつける!」
 「三人はいきなり殴りかかってきたがボウリング未経験者ばかりで一人当たり

のロジックは玄武より弱いのでハメ業で倒せた」
 まだ、奴がいた。ボウリング魔王だ!
 「わしがボウリング魔王だ!アウトドアボウリングで勝負だ!」
 「アウトドアボウリングとは屋外の広い場所、特にゴルフ場を貸しきって穴に

入れたり出したりを楽しむあれか!」
 「さすが博識だな。告ぐものよ。いや、我が息子といっておこうか」
 「そんな倒産だったなんて!」
 「わしの体内には裏切ると爆発する毒袋がある。わしを越えてみろ」
 「父は本気ですか」
 終わり。

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