237(42停止目)

 俺が時を止められるようになったのは大学に入ってからだった。
突然に周囲が真っ暗になったと思うと、周囲が雲のように見えた。
エレベーターで上昇するような感覚がずっと続いて吐きそうだったが、
自分が息をしていないどころか心臓すら動いてないと気付いた。
 他の人間や物が動くことは無い。鳥は羽ばたかずとも落ちず、
車はアクセルが全開でも進まず、何かを食っても腹は満たされない。
その世界で動けるのは俺だけ。俺だけが法則を書き換えられる。
時の支配者は俺だったし、停止した時の法則は俺に支配された。
 そして、俺は今、超能力者免許をとらなくてはいけなくなった。
去年から超能力者は超能力を使うのに無免許では犯罪なのである。
 最初の試験管はマッチョガイで全身から夏場のカレーみたいな匂いがした。
 「第一関門は豆拾い対決だ」
 男が言った。
 「この割り箸で皿の上に盛られた豆を拾い隣の皿にたくさん入れた方が勝ちだ

!制限時間は五分!フェアに戦おうぜ!!」
 「わかった」
 だが、これは罠だった。俺の目の前の皿に盛られたのはただの豆じゃない。
遠足でバカが持ってそうな甘納豆じゃないか!
相手の方に目をやるとただのプレッツェル……何と卑怯なんだ。
 こうして怒涛の一回戦が幕を開けた。
試験では超能力を使うことは禁じられている。これは厳しい頭脳戦だった。
刻一刻と過ぎる時間、自分は粘り気に妨害されて作業が進まない。
 「くくく、この試験に落ちると二度と妻子は無い」
 「くっ!ずるがしこいやつだぜ!!」
 残り一分、スコアは四対八で劣勢!!この逆転のアイディアを思いついた。
俺は箸を揃えて豆を練り始めた。右に二十回、左に二十回。
 「くくく、豆が泡立つだけで血迷ったか」
 「果たしてそうかな?」
 俺は糸を引いた豆を一纏めに箸に括り付けて皿の上に置いた。逆転だ。
 「そうか!?そんな方法が!俺の負けだ」
 ドカーン。
 「死んだ!!」
 試験管が蒸発した。遠くからビームが飛んできたのだ。
 「お前は絶対に許せない!誰だ!」
 そこに立っていたのはボーキサイトを片手に持った白装束集団だった。
 「歯医者は死すべき」
 「そんな論理は許せない!」
 こうして第二試験が始まった。種目は輪投げだ。
輪に入ったものをもらえる。この時はまだデスマッチだとは知らなかった。
 「うおーくらえー」
 どーん。
 俺に向かって白装束集団が手裏剣を投げてきた。
 「何をする!」
 「言わなかったかな?これは相手の命だってもらえ死ね!」
 食らった。胴体が真っ二つになる。俺はもう駄目か……。
 そんな時に目の前に今は亡き父親の姿。
 「頑張ってるお前にこれを授けよう」
 「これは将軍から授かった軍刀!!」
 復活した俺は瞬く間に敵を切り殺し第二の関門を突破した。
 俺達の冒険はこれからだ!!終わり。

inserted by FC2 system